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新田音楽友の会会長 河村 吉太郎(太田市新田木崎町)



【略歴】東京都生まれ。18歳で陸軍少年飛行兵に。終戦後、旧綿打村職員となり、合併により旧新田町職員に。社会教育、文化関係、公民館に勤務。元旧新田町立図書館長。



文化的な生活


◎憲法の下で謳歌したい


 またしても起きた国務大臣の辞任騒ぎ。就任五日目、「なんのための大臣か」と言いたい。単なる失言ではない。「成田空港反対闘争は『ごね得』」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」「日教組をぶっ壊せ」などと言いたい放題で、到底一国の大臣発言とは思えず、大臣の品位など微塵(みじん)も感じられない。国民の代表として憲法を守るべき公務員としては失格だ。言葉足らずで一部分を「撤回」と言っていたが、「がんばれ」「辞めるな」のメールをもらって喜んでいる人なのだから、発言は「全部本心です」と居直った方がよほど男らしい。

 今はグローバルな時代。わが国は、憲法を基軸に世界(平和)に貢献していくことをアピールしてほしいのだ。そこに各国からの信頼も集まり、国の発展に繋(つな)がっていくものと信ずる。

 私たち国民は、今日まで新憲法に守られて生きてこられた。不勉強ながらも体に沁(し)みていて、大臣のような発言は思いもよらない。憲法は空気のようなもので、なんとなく脳内にインプットされていて、どこからも見えないが、困ったときや心配ごとのあるときは顔を出して、相談に乗ってくれる頼もしい存在だ。第九条は別格として、私は、生活文化を謳(うた)う第二十五条が大好きだ。生きていく希望の星のようだ。

 年を取ってくると「無病息災」は難しい。動けるうちは生き甲斐(がい)を求めて文化の恩恵に浴し、生活を謳歌(おうか)したい。友人たちと、あるいは一人でも行動するのが若さを保つ秘訣(ひけつ)のようだ。ならばグループ、サークルに入って活動したいが、新たに立ち上げるのも楽しいのではないか。

 ぶらりと一人で出掛けるのならお勧めは図書館だ。あらゆる分野の方と出会える。気に入った本やCD、ビデオがあればしめたものだ。そこで賢人にも会えるし、友だちが一人は増えることになる。お金はいらない。不景気のこの時代にはぴったりではないか。欲しい資料がないときはリクエストするとよい。欲しい物を予約して待つのも楽しいではないか。

 知りたいことが分からないときや、調べ物の相談に乗ってくれるのは図書館司書だ。しかし、地方自治体の財政が厳しいとの理由で司書の配置が少ない。市民の要望にどれだけ早く応えられるかは、図書館の実力でもあるし、県、市、町村の文化度を問われるところでもある。

 市町村民憲章は殆(ほとん)どの自治体で制定されている。自然、文化、人権、環境、産業と、大同小異の言葉が羅列されている。憲章が市町村の象徴ならば、市町村長、議会議員は、先頭を切って地域文化の高揚を図る責任がある。具(つぶさ)に現状を把握して、速やかな対応を望みたい。





(上毛新聞 2008年10月16日掲載)