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上武大ビジネス情報学部准教授 花田 勝彦(高崎市大橋町)



【略歴】京都市生まれ。早稲田大卒。エスビー食品を経て、2004年から現職。アトランタ五輪1万メートル、シドニー五輪5000メートル、1万メートルの日本代表。アテネ世界陸上マラソン日本代表。



箱根駅伝予選会


◎思いを一つに打ち込む


 いよいよ箱根駅伝予選会が明日に迫った。箱根駅伝は来年正月の大会で八十五回という節目を迎えるが、それを記念して今大会に限り出場枠が十九校から二十二校へ増える(関東学連選抜チームは含まない)。今年正月に優勝した駒沢大をはじめシード権を持つ九校と、この予選会を勝ち抜いた十三校が東京―箱根間を舞台に競うことになる。

 八月から短期間のものも含め五回の合宿をこなし、最終的に十四人の予選会エントリーメンバーが決まった。予選会は、そのうち十二人が出場して二十キロを走り、上位十人の合計タイムで出場権を争う。一昨年の予選会では、拓殖大がわずか一秒で本戦出場を逃すなど、出場権争いは毎年熾烈(しれつ)である。レースを目前にして、選手たちの緊張感は高まっている。心の中は楽しみというよりは不安な気持ちでいっぱいだろうが、自分たちがやってきたことに自信と誇りを持ってレースを迎えてほしいものだ。

 私が駅伝部の監督になって、今回で箱根駅伝予選会は五度目の挑戦となる。部員わずか十四人で迎えた一度目の挑戦は、本戦出場権争いからは総合タイムで三十分以上も遅れての総合十九位。それでも出場した全員が自己ベストを更新し、指導者として大きな喜びを味わうことができた。

 二度目は総合十六位。順位こそ上がったが、選手たちのタイムが思ったほど伸びず、自分の指導力不足を痛感した。

 三度目は総合十三位。上位チームをも脅かす選手たちの気迫に満ちた走りに鳥肌が立った。

 そして、四度目の挑戦となった昨年は、同じく総合十三位。目指すところはもうそこまで来ているのになかなか近づけない―焦りにも似た悔しさを感じた。今年正月の箱根駅伝に、上武大生として初出場した福山真魚の快走(関東学連選抜チーム五区区間三位)は、そんなモヤモヤした気分を吹っ飛ばしてくれた。

 五度目となる今年の予選会の結果がどうなるかはわからないが、一ついえることがある。それは私も、そして選手たちも今、同じ一つの大きな目標に向かって頑張っているということだ。便利になり過ぎて、逆に孤独を感じたりする今の世の中で、思いを一つにした仲間と、こんなにも純粋に何かに打ち込むことができるのは本当に幸せだと思う。これこそが、スポーツの素晴らしさではないだろうか。

 私の人生は陸上競技を抜きにしては語れない。陸上競技を通じて多くの友人たちと出会い、そして多くの貴重な体験をすることができた。陸上競技というスポーツと出合えたことに感謝している。これからも陸上競技を通じて、スポーツの素晴らしさをより多くの人々に伝えていきたい。





(上毛新聞 2008年10月17日掲載)