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元県中体連卓球部委員長 田村 眀人前橋市竜蔵寺町)



【略歴】群馬大学芸学部(現教育学部)卒。1966年に赴任した沼田中学校から卓球指導にあたる。県中体連卓球部委員長、関東中体連卓球部運営委員長などを歴任。



「本物」の見聞



◎自己実現につながる



 美術科担当教師だった私は、学生時代にソフトボールを少々やった程度で卓球部顧問に就任、長年「卓球指導」に情熱を燃やしてきたおかげで一流選手や一流指導者に出会い、「本物」を学び学べたことがラッキーで、感謝、感謝である。

 そこで、今回は「本物」を見る・知る・聞くことの大切さについて、述べてみたいと思う。

 卓球指導初心者時代は、専門書等を購入し、熟読したり、夜卓球センターへ通って上手な人の「本物」のプレーを見たり、自らラケットを振るなどの毎日だったが、思うようにいかず悪戦苦闘の連続であった。

 幸い、当時の沼田中が夏の県中学校大会で、団体優勝・準優勝が数種目の伝統校であり、毎年好成績を収めていた。

 そこで、いつでも先輩指導者の効果的なトレーニングやミーティング方法、指導・助言の秘訣(ひけつ)やポイント等の「本物」を、身近に見聞し学べたことが、その後の指導力向上の「原点」であり、大いに役立っている。

 そして、県中体連卓球部委員長の要職に就任して、選手強化と大会運営を車の両輪と考え、中央から一流選手・一流指導者を招請しての強化講習会や強化合宿を実施し、「本物」の見聞に努力した。

 特に、一流選手は素晴らしい「本物」のプレー等を即、披露し、感動をプレゼントしてくれる良さがある。

 一流指導者は指導を受ける選手のレベルに合わせ、ポイント等を理解させる「例え話」が見事で、目の前の選手が「どんどん」変わる(向上する)のが、手に取るようにわかる素晴らしさがある。

 従って、選手と顧問教師が一緒になって、卓球技術の基礎・基本や体力づくりを筆頭に、メンタル面の強化等の「本物」を見聞することが、選手のレベルと指導者の指導力向上に最適と考え、長年努力してきた。

 以上のように、卓球指導で学んだ「本物」を見せる良さは、美術教育にも効果的と考え、同年代の中学生が制作した参考作品(努力作品等の本物)の活用を、最大限に重視して取り組んできた。

 おかげさまで、学習意欲乏しく成績不振の生徒の創造意欲喚起にも直結し、かなりの成果を収めることができた。

 「本物」の見聞は、スポーツだけでなく文化等でも、大輪の花を咲かせる(成功)原点であり、向上への鍵である。

 小さなころに、「本物」を見たり、「本物」に出合ったりした感動が、物事を好きになる出発点であり、次に「本物」による正しい基礎・基本をマスターし、その上で個を発揮した自分にしかない「花」を咲かせることが、人生最高の自己実現(パフォーマンス)である。






(上毛新聞 2008年12月5日掲載)