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日本愛妻家協会事務局長 山名 清隆(神奈川県川崎市)



【略歴】静岡県出身。広報企画会社「スコップ」代表。褒める気持ちで首都高の事故を減らす計画や、嬬恋村でイベント“キャベチュー”を行う日本愛妻家協会などを企画。



嬬恋村



◎世界でひとつの名前



 「妻という最も身近な赤の他人を大切にする人が増えると世界はもっと平和になるかもしれない。という甘い理想のもと、日本独自の伝統文化かもしれない愛妻家というライフスタイルを世界に広めていく文化活動です」

 そう言い切って始めた日本愛妻家協会の活動は今年で四年目。会員は百五十人を超え、自主的な支部は国内外で十カ所を数えます。奥さんを大切にした暮らしをしたいと望むそれぞれの個人が、肩肘(ひじ)張らずにのんびり楽しみながらやってるうちに世界が巻きこまれてきたという感じです。

 一月三十一日を「愛妻の日」に制定し、日本の男はその日午後八時に家に帰って一斉に奥さんに愛と感謝を捧げてみようという「男の帰宅大作戦」をやったり。奥さんへ愛情を伝え切れていないと思う男性は嬬恋村のキャベツ畑に集合して叫んでみればと「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ」、略してキャベチューをやってみたり。そのつど思いついたアイデアを面白がってそのまんまワイワイとやってきただけです。

 最初はさすがに愛妻家協会なんて言ってと揶揄(やゆ)や皮肉が来るかなあと思っていましたが、うれしいことにいまだ賛同の便りだけで勇気をもらって運営しています。多くの奥さま方からは愛妻家を育てる愛妻家育成マニュアルを作りたいとか、ウチの旦那(だんな)を変える愛妻家養成講座をやってほしいなど明るく前向きな提案をいただきます。旦那衆からは妻への効果的な謝罪方法やご機嫌の取り方など対策的な知恵を求められている傾向にあります。

 帰宅大作戦やキャベチューは、かつての僕のように妻に感謝の言葉を掛けられないでいる男性に、気楽に言える機会と夫婦の対話のネタになればいいなと思っています。会話の無いどこかの微妙な夫婦がキャベチューの記事を見て「あんなことやって…」と二人が話すきっかけになれば素敵(すてき)だなあと思っています。

 思えばすべての始まりは嬬恋村というロマンチックな名前の力です。明治時代の村長が日本武尊(やまとたけるのみこと)伝説から着想し命名したとされていますが、この時代、妻が恋しいと名乗るのはさぞ勇気がいったことでしょう。すごいことです。それから概(おおむね)百年、やっと日本も男が妻を大切に思う気持ちをもっと表明してもいいという空気になってきました。

 僕たちはその世界にひとつしかない素敵な名前の場所が、世界でただひとつの愛妻家たちの聖地になる、という壮大なビジョンを思い描いて楽しんでいます。成田空港からTSUMAGOIに直行し、キャベツ畑で愛を叫ぶ多くの外国人客の姿が思い浮かんでいます。





(上毛新聞 2008年12月11日掲載)