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沖縄料理研究家 高山 厚子(東京都練馬区)



【略歴】沖縄県出身。琉球大卒。都内の小学校長を経て現在、三鷹市教委非常勤。料理をテーマに執筆、講演。館林市とも交流。著書は『緑のカーテンの恵みを食べよう』。



ゴーヤーの縁



◎街づくりの結びつきへ



 私は、「群馬県館林市」というだけで、ふるさと沖縄に抱くような心の高まりを覚える。ご縁を結びつけたのは、「緑のカーテンとゴーヤー」だ。緑のカーテンとは、「ゴーヤーやヘチマ等のつる性植物を窓辺に這(は)わせ、葉の蒸散作用により室内の温度を下げ、環境にやさしい生活をしよう」という運動である。テレビでご覧になった方も多いのではないだろうか。

 もともと料理好きの私は、二〇〇六年夏の三日間、板橋区エコライフ週間の緑のカーテン料理ボランティアとして区民へ恵みの料理を提供。ゴーヤー料理好きの人は多かったのだが、ヘチマ料理に関しては、「えっ? 食べられるの? 本当にあの垢(あか)こすりのヘチマなの? でも、美味(おい)しいですねえ」と驚きの声、声。

 ヘチマやゴーヤーは沖縄の夏の食材を代表する植物。また、クーラーのなかった時代、その棚の下は涼を求める憩いの場所であった。ところが今、地球温暖化防止に貢献できる植物として新たな注目を浴びている。私には、沖縄の風土と先人の知恵が生かされているような気がし、「そうだ。料理を通して楽しみながら運動を支えてもいいのでは?」という発想と、ヘチマも美味しい食材であることを多くの人に知らせたいという想(おも)いから、昨年五月、「緑のカーテンの恵みを食べよう~ゴーヤー・ナーベーラー(ヘチマ)」の本を自費出版。

 そんなある日、近所のスーパーで購入した立派なゴーヤーは、何と館林産。ご縁(?)があり、本年一月、私は、館林市環境賞顕彰式で講演、館林市長と郷里の名護市長が懇意と知りびっくり。ご縁は続く。三月、「第一回緑のカーテン全国協議会」が那覇市で開催され、館林市副市長もご参加。お礼にと四月、緑のカーテン応援団一行と私は、館林市の緑のカーテン実践講座へ参加。生のヘチマ料理を市民の皆さんに試食していただいたところが大好評。

 こうしたご縁がさらにつながり、八月、全国一暑い館林市と報道された日、日本一熱い想いを込めた「緑のカーテンの料理教室」を館林市で実施。そこで私が感動したのは、新しく組織されたボランティアの皆さんの活発な姿であった。環境課を「地球環境課」と改めた館林市の意気込みを感じたのである。

 欧米とは違い、日本社会では、まだまだボランティア組織を発足させることは容易ではない。しかし、行政がつかず離れず自主性や発想を支援し、一歩を踏み出させることは大切な要素であると思う。活動を媒介として人と人が結びつき、新しい街づくりが全国でも生まれている。

 二十一世紀は、人と人、自然と人(世界)が支え合う時代。結びつきや広がりは、こうした小さな取り組みやつながりから生まれると思っている。




(上毛新聞 2008年12月17日掲載)