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二科会デザイン部会員(審査員) 鳥越 修治(東京都世田谷区)



【略歴】】前橋市出身。鳥越デザイン事務所代表。二科会デザイン部会員賞11回受賞ほか。日本グラフィックデザイナー協会会員。あかぎ国体デザイン専門委員も務めた。



都市のロゴタイプ



◎時代に即応し調和へ



 久しぶりに鎌倉を訪ねた。鎌倉駅を降りて若宮大路口の改札を出ると、すぐ右にTOKYUの建物がある。そこに掲げられた「ぐるめプラザ109」のサイン文字が目に映った。懐かしいデザインでネーミングからロゴタイプデザインまで手掛けたころを思い出す。一九七五年の制作である。その後、東京・渋谷の道元坂下交差点にファッションビルとして銀色の円筒形のビルが建設され、七九年に「109」のロゴが採用されることになった。

 このころ、企業はネーミングやロゴの重要性を認識し、企業のシンボルマークやロゴタイプデザインの創成期でアイデンティティーの導入期でもあった。「109」は「イチマルキュウ」と読み「トウキュウ」(東急)とは読まない。この「109」の意図したところは多様性に富み、特定業種の意をもたないイメージネーミングで記憶性が高いこと、個性的で視認性に強いことなどであった。

 渋谷の「109」は、オープンのころはファッションコミュニティー「109」と称してスタート。今では若い女性の流行の情報発信地といわれるように全館、ファッションの店舗が勢ぞろいしている。自己流のアレンジがスタイルを生み自分表現を楽しむという、その新しいパフォーマンスは全国に広がり、渋谷発の流行を“奏でる”ようになった。今ではSHIBUYA「109」と改め、渋谷街のシンボル的な存在になっている。外観は三十年たつ今も現役である。

 幾多の変遷を経て環境に呼応しながら、そこから新しい文化が生まれていく。それぞれに個性ある建築物の群れは都市景観の重要な担い手である。その建物と一体になるネーミングはロゴタイプという形に表現され、変わらぬ新しさを発揮する。そしてロゴタイプは都市景観を一層ひきたて、その時代に調和していくものであってほしい。

 さて、都市の景観は地下にも及ぶ。東京の地下鉄は新路線も増えて便利になった。観光立国を目指す日本は外国からの観光客に分かりやすい案内表示が必要となる。道路、鉄道、駅などの案内サイン、誘導サインは誰もが理解しやすいことが重要である。実際、地下鉄の駅名や路線案内などに目を転じると表記が変わった。駅名と併記して始発駅から、英字のイニシャルと番号が付いて、例えば、銀座線渋谷駅は「G 01」のように分かりやすく記号化された。そして、路線別のカラーラインで色分けされて見やすい。さらに多国語表記もされ明解になった。

 このように都市機能は便利で生活しやすいことが肝要で、国内外を問わず人の行動に対応する万国共通の記号やアイソタイプ(絵文字)などの導入が全国の観光地にも必要であり、時代に即応したデザインが望まれる。





(上毛新聞 2008年12月28日掲載)