視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
キッズハウスコモック経営 石井 浩行(大泉町住吉)



【略歴】】日本写真芸術専門学校卒。山岳、アウトドア雑誌の編集を経て、太田市内におもちゃ店を開店。木製を中心にぬくもりのあるおもちゃを10カ国から取り寄せている。



おもちゃの安全



◎1人1人の目利き重要



 「このおもちゃ、舐(な)めてもだいじょうぶですか」

 木のおもちゃ屋を経営する中で、幾度となく質問され、私はこう答えてきました。

 「はい、大丈夫です。当店では日本の玩具安全基準(ST)、もしくは欧州連合安全基準(CE)の玩具製造安全基準(EN71)に適合したものだけを扱っているので、安全です」

 ほとんどのお客さまはこれを聞いて納得されていました。

 何でも口にする乳幼児にとって、塗料の安全性は絶対でなければなりません。おもちゃの色落ちが心配だと相談されることがありますが、色落ち自体にあまり問題はありません。色落ちを防ぐための溶剤の種類に問題があるのです。

 ST基準では、食品衛生法に基づいた「口に入れても安全」な塗料の仕様が義務付けられています。また、EN71に適合したおもちゃでも日本の税関を通る際、食品衛生法に基づいた食品添加物の安全試験を受けています。

 ここ数年、塗料の含有成分に基準値以上のものが使われるといった問題が続いています。

 その都度メーカーや輸入元は問題を公表し、謝罪、自主回収しますが、そのどれもが安全基準に適合した製品ばかりです。

 安全基準に適合しているからといって、本当に安全なのか。

 ときどき自問しては、おもちゃを扱うものとしての的確な答えを探してしまいます。

 メーカーや税関の検査は以前よりも時間とコストを費やし厳しくなっていますが、そのすべてをチェックできていない現状があります。とても残念ですが、種々の安全規格やマークといったものだけを信頼できる時代ではなくなってしまったと実感せずにいられません。

 今のおもちゃ屋に求められるのは、ひと言でいうと「目利き」といえます。見て、触って、においを確かめて、商品自体はある程度チェックできます。加えて、メーカーや代理店に対してもコミュニケーションを通じた目利きが重要となります。それができてこそ自信をもってお客さまに商品を提供できるのです。

 これはおもちゃ屋だけにいえることではありません。私たちの生活すべての場面でいえることではないでしょうか。

 物やサービスを提供する側は当然のこと、受ける側の私たち一人一人にも目利きが求められています。




(上毛新聞 2008年12月29日掲載)