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日本動物愛護協会群馬支部長 石井 文子(高崎市岩押町)


【略歴】】埼玉県出身。2001年、日本動物愛護協会群馬支部を結成。同支部のアニマルランドで犬と猫の里親探しに力を入れる。また、講演会など啓発活動を積極的に行う。


犬を買う


◎動くオモチャではない



 五年過ぎ、今でも消え去らないつらい思い―。

 ショップに可愛(かわい)い犬たちが眠っている。中でも、生まれて二カ月たっているのか、手のひらに乗るぐらい小さなミニチュアダックス。母親から離れたばかりなのだろう、母を捜す仕種(しぐさ)が印象に残っている。

 「ママ買って!」と指さす二歳ぐらいの女の子。母親が大声で「市営住宅だから飼えない」と叱(しか)る。すると「パパ買って!」と大声で泣く。父親は禁煙の場所なのに右手で煙草(たばこ)を持ち、左手で六カ月ぐらいの男の子を抱いている。突然中から出てきて「今日、この子犬は三割引きでお得」と勧める店員と、小さな声で話し始める。

 「買ってあげるから泣くのはやめて」と父親、「ママは反対よ。子供二人育てるのが精いっぱいよ。いい加減にして。買って誰が犬の面倒を見るのよ」と母親。そして「この子が見るさ」と女の子を指す父親。子犬を欲しいのは父親か…。

 二人の会話に怒りを感じ、その場所を離れたが後ろ髪を引かれる思いになり、戻ってみると家族がいない。ウインドーの中のミニチュアダックスの姿も消えている。自分の目を疑った。

 店員さんに伺った。「先ほどの家族が連れていったのですか?」。店員さんは平然として「売れたんだよ」。「だって飼えない家だったんでしょ? それに子犬の育て方などの説明は?」「この説明書一枚渡したよ」。うるさいと思ったのか、店員さんは中へ入っていってしまった。

 なぜ勇気を出して、あの家族が犬を飼うことを止めることができなかったのか、無念で心が痛む。子犬を親から離すのはまだ早すぎる。あの子犬はどうなるのか。家族全員賛成していることではなかったし、母親は子供のことで精いっぱいなのではないのか。あのダックスは何も知らず、箱の中に入れられて買われていったのだ。愛情、健康管理、費用…。それらは二歳の女の子には無理。

 動物の衝動買いは家族にとって重荷になるだけ。買うときは家族がよく話し合い、十年二十年、愛情を持って飼い続けることができるかどうか、考えていただきたい。犬は買った時点から家族の一員。最後まで優しく育ててほしい。

 また、ショップの方々にも申し上げたい。尊い命のこと。その家族になら子犬を託すことができるかどうか、見極めてほしい。

 犬は、人間のことはすべて分かる。人間が犬を可愛いがれば、犬もそのことをちゃんと感じ取る。だから、一人の子供が増えたという気持ちで犬と暮らしてほしい。動物は飼い主が親であり、どのようなことがあっても反抗することはない。動物を動くオモチャにしてはいけない。




(上毛新聞 2009年1月4掲載)