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元県中体連卓球部委員長  田村 眀人(前橋市竜蔵寺町)



【略歴】群馬大学芸学部(現教育学部)卒。1966年に赴任した沼田中学校から卓球指導にあたる。県中体連卓球部委員長、関東中体連卓球部運営委員長などを歴任。


スポーツ指導



◎初期段階が鍵となる



 児童生徒の「心と体」を鍛えるのに最適なスポーツは、パソコンの初期設定同様、初期段階での適切な指導が最も重要である。

 どんなに素質的に優れていても、スタート時の指導が悪いと、技術的にある程度向上しても、その後は伸び悩むのが確実である。

 世界に誇る日本の伝統的な武術の柔道や剣道、文化の華道や茶道等には、共に「道」がついている。

 これは、礼儀やマナー等の心を重視した「人づくり」が基本であり、私たち指導者にとっての良き指針である。

 よって、次のような初期設定での指導に努力することが求められている。

 まず、第一段階の留意点は褒める・励ますことで「好き」にさせ、同時にその種目の良さや楽しさを少しでも早く味わわせることが、「夢中」にさせる原点である。

 その上で、礼儀やマナーを徹底し「あいさつ・返事」をしっかりさせ、また練習場は技だけでなく「心」も鍛える(磨く)場所であることを、十分理解させて清掃美化等にも努力させることが重要である。

 使用する用具類は個人や公用を問わず大事にし、指導の先生やコーチ、支援・応援の学校や親に対して、いつも「感謝」の気持ちを持たせることも、「心の教育(人づくり)」として大事である。

 そして、技術面では「型から入り型から出る」ことが大成への道であり、「正しい」基礎基本をマスターさせることが最大の留意点である。

 特に、基礎基本を間違えたら悪い癖等を直すのに大変な「苦労と時間」を要するので、要注意である。

 このほかに、現代っ子は体力面での非力さが顕著なだけに、「基礎体力づくり」を手抜きせずに、地道に努力することが大きく伸びる条件であることを、十分理解させる必要がある。

 メンタル面でも大事な試合でプレッシャー負けして、日ごろの実力を半分も発揮できず、苦杯・惨敗のケースが多い。「弱気はすべての努力をゼロにする!」ことを徹底指導し、大きい声を出しての練習等を習慣化させることが重要である。

 以上のような指導で強くなると、さらに十分な練習時間の確保、ユニホーム代や大会参加費、遠征交通費等が必要になる。

 従って、親の負担軽減を考慮し、小遣いの無駄遣いをしない指導や、親のさらなる理解や応援等を得るために「勉強との両立」を徹底することが大前提となる。

 特に、中学生の場合は親が、各種大会等で勝つより希望する学校へ合格することが最も強い願い(思い)であり、学習成績向上への支援が「栄冠獲得」の重要な鍵である。






(上毛新聞 2009年2月3日掲載)