視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
県臓器移植コーディネーター  稲葉 伸之(館林市大島町)



【略歴】 新日本臨床検査技師学校卒。千葉県内の病院に勤務後、青年海外協力隊に参加。帰国後、県立がんセンターを経て総合太田病院ME課(臨床工学)に勤務。


臓器提供



◎「人の死」理解の延長で




 臓器提供には、脳死下臓器提供と心停止下臓器提供、そして親族から臓器を提供してもらう生体移植の三つの方法がある。

 脳死下臓器提供は、一九九七年十月十六日から施行された「臓器の移植に関する法律」に基づき行われ、脳死判定に従う意思と臓器提供する意思を本人が生前に書面で表示しており、なおかつ家族が拒まないことが条件となっている。また、提供病院も限定され、入院治療していた病院が四類型と言われる「大学附属病院、日本救急医学会指導医認定施設、日本脳神経外科学会専門訓練施設A項、救命救急センター」でなければならない。なぜなら、脳死判定も法律のガイドラインに規定され、六時間の間隔をあけて二度行われ脳死と診断されるが、世界で最も厳しい脳死判定が的確に実施できる医療施設という意味で病院が限定されているからである。

 心停止下臓器提供は、一九七九年に施行された「角膜及び腎臓の移植に関する法律」で規定されたが、「臓器移植に関する法律」で経過処置として効力が有効であるとしている。心停止下臓器提供は、一般の病院でも臓器提供が可能で、本人の意思が不明な場合は家族の判断に委ねられるため、時には、臓器提供の判断に迷われる家族がいる。日ごろから家族で終末期医療や臓器提供に関して十分話し合うことが重要である。心停止下臓器提供は、脳死を経ない場合でも臓器提供が可能であるが、心停止してからの連絡や準備では臓器提供は間に合わず、昏睡(こんすい)で終末期にあり救命が困難と診断され家族がそれらを受容している時期に、臓器移植コーディネーターに連絡が必要である。

 生体移植は、「和田移植」以来、「脳死」「臓器移植」に慎重になった日本で、亡くなられた方からの臓器提供が進まなかったため、親族からの提供で肺・肝臓・膵臓(すいぞう)・腎臓などが行われている。しかし、健常であるドナーに侵襲を及ぼす医療行為は、本来望ましいと私は思えない。

 先日、NHK「クローズアップ現代」でも取り上げられたが、世界保健機関(WHO)は、日本の臓器移植医療の現状をふまえて、世界移植学会の「イスタンブール宣言」に基づき、「日本は自国民で臓器移植医療を必要とする患者に対し、早急に自国内で臓器移植医療を供給できるよう国家として努力をすべきである」と勧告している。臓器移植法施行より十一年、法律の見直しとともに、日本もアメリカのように「脳死」「心臓死」どちらの死も認められるように、各医学会や国、地方公共団体も含めた場での議論が必要と考える。脳死=臓器提供ではない。「人の死」として、脳死と心臓死を理解することが重要で、その延長上に選択肢の一つとして臓器提供がある。






(上毛新聞 2009年3月5日掲載)