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東京福祉大・大学院教授  栗原 久(前橋市昭和町)



【略歴】群馬大大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了。同大医学部助手、同助教授、和漢薬研究所を経て現職。専門は薬理学。著書に『カフェインの科学』など。



よりよい睡眠



◎気を付けたい酒と茶




  睡眠とは、日中働いた大脳に休息を与え、明日の活動に備えるために必要不可欠な生理現象である。人生百年(約九千万時間)とすると、その三分の一の約三千万時間が睡眠に当てられている。睡眠には「タイプ」、「時間」、「深さ」の三要素が重要で、どれかが欠けてもよい眠りとならない。

 成人における最適の睡眠は、(1)大脳が休息するノンレム睡眠と覚せいの準備で夢を見るレム睡眠の総量比が四対一(2)夜半前に就床して寝つきがよく、六~九時間の睡眠前半に深いノンレム睡眠が15%以上含まれる(3)無呼吸、いびき、歯ぎしり、激しい寝返りがなく、中途覚せいが少なく、レム睡眠の段階で目覚める―というものである。
 
このような睡眠が行われれば、熟眠感があって日中に異常な眠気が起こらず、仕事や勉学に集中できる。ところが、睡眠時間はライフスタイルの変化で全年齢層にわたって年々短くなり、それに逆比例して不眠に悩む人が増加している。睡眠不足や睡眠障害は生活の質(QOL)を悪化させるだけでなく、さまざまな事件・事故の原因ともなる。
 
不眠の原因としていくつか挙げられているが、日常生活の中で摂取されているアルコールとカフェインを無視できない。
 
アルコールは脳の活動を抑制し、寝酒として利用されているので、睡眠に有効と考えがちである。しかし、日本酒換算で二合以上の飲酒では、深いノンレム睡眠とレム睡眠がともに減少する。また、アルコールの利尿作用や中間代謝産物のアセトアルデヒドの中枢刺激作用のため中途覚せいが起こりやすくなる。さらに、アルコールの粘膜充血作用や筋弛緩(しかん)作用は、いびきや睡眠時無呼吸を憎悪させる有力な危険因子である。少量の飲酒は入眠に有効であるが、不眠の解消にお酒を利用するのは逆効果であり、絶対に避けるべきである。
 
就寝前にカフェインを摂取すると大脳の興奮で寝つきが悪くなり、利尿作用も加わって中途覚せいの増加と深いノンレム睡眠の減少が起こる。特に、高齢者は生理的に不眠になりやすく、しかもお茶を多く飲む機会が多いので、カフェインの影響を受けやすい。お茶、コーヒー、コーラ飲料などにはカフェインが五十~百ミリグラム含まれ、その効果は摂取から約四時間持続する。従って、睡眠への影響を避けるには、夕方以降のカフェイン含有飲料の摂取は避けるべきである。緑茶の場合、カフェインは一番煎(せん)じの中にほとんど出てしまうので、二番煎じにするのがよい。渋みの元で健康によいとされる茶カテキンは、一番煎じより二番煎じに比較的多く含まれている。




(上毛新聞 2009年3月17日掲載)