視点 オピニオン21
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NPO法人手をさしのべて理事長  桜井 信治(高崎市寺尾町)



【略歴】県内22団体で組織する不登校ひきこもり支援団体ネットワーク代表。学習塾グローイング代表。高崎市まちづくり市民会議、県教育問題県民懇談会の各委員歴任。



不登校という選択



◎悩んだら視点を変えて




 私は不登校ひきこもり支援のためカウンセリングを行っています。毎日いろいろな家庭を訪問し、話をしていますが、本当に視点を変えてみると、しっかりしている子供が多いことに気づきます。

 先日行った家庭では不登校について相談を受けました。親の心配は、今後の進路です。不登校だと高校に進学できないのではとのことです。この辺の情報って本当にさまざまですよね。群馬県には通信制の学校を含め、不登校を受け入れてくれる学校はあります。公立高校や私立高校など全日制高校でも受け入れはしてくれます。一番は本人のやる気というところですね。受験しなくてはなりませんから勉強することは必要になります。不登校生の場合、学校にいませんから当然授業を受けていません。つまりほとんどの子供は独学になってしまいます。

 私が訪問したこの家庭では、子供が高校を受験するために独学で頑張っていました。何らかの問題があり、中学に行くことをあきらめてしまいましたが、高校への進学、高校生活への強い憧(あこが)れと期待を持っていました。今、受験で塾にも行かず独学で勉強している子供はどれくらいいるのでしょうか? 大半は塾に通う、または家庭教師を頼むなど学校以外でも指導を受けているのではないでしょうか。

 そんなことを考えていくと、不登校という道を選択しても、自分でやっていることは十分に評価できることだと感じました。私は不登校は悪いものだと考えていません。たいていの子供が不登校を選択するときに本当に悩み、決断をしています。特に高校受験が近くなるとそのリスクも考えていると思います。苦渋の決断だと思います。でも、自分の意思で自分の道を選択して行動に移しています。

 視点を変えてみると、普段見えないことに気付いたり物事の本質に向き合うことができたりします。人間、生きていれば必ず問題にぶつかります。そんなときにこんなことができれば、また違った選択もできるのかもしれませんね。

 私自身この仕事を行い毎日勉強させてもらっています。さまざまな相談を受けていますから、それだけの対応策などがあることを知っています。でも、どんな相談を受けても一点から判断することはしません。やはり選択肢は多いほうが良いと思っているからです。そのために視点を変えて考えることをしています。そんなことが今は本当に生きてきているのかもしれません。どんなことにも共通することかもしれませんが、点より線、面のほうが本質に近づけるのではないかと思います。何かに悩んだときはぜひ視点を変えてみてください。そんなことが悩みを軽減させてくれるはずです。



(上毛新聞 2009年3月19日掲載)