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県農業法人協会長  武井 尚一(富岡市宮崎)



【略歴】高崎商高卒。脱サラし、1989年から農業に従事。98年に有限会社「武井農園」を設立、農産物のブランド化などに取り組む。富岡市認定農業者協議会長。



農政改革に望むもの



◎経営盤石化の方向に



 政府は首相を本部長に据え、抜本的な農政改革に取り組んでいます。この改革が、国の基幹産業である農業を活性化させられるかどうかを決める重要な意味をもつことは明らかです。

 私は、以下の問題を重点に、今後の農業経営の盤石化を図る政策を打ち出し、方向を示すべきだと思います。

 (1)食料自給率の向上(2)担い手の確保(3)コメ生産調整(4)遊休農地の解消(5)経営の安定対策(6)中山間農業の活性化―などです。今、これらの解決は早急に求められており、さらなる農業の発展に急務と考えています。

 (1)の自給率については、日本農業の生産力は旺盛であり、問題となるのは消費者にもう少しコメの消費を増やしてもらうこと、家畜飼料の国産穀物使用率を高めることなどで自給率は確実に向上します。(2)の担い手については、家族型農業経営体の後継者対策が著しく低下しており、「自分の代限り」と、半ば投げやり的な経営の取り組みを助長してしまっています。一方、法人経営体は担い手である人材を、農家の子弟を問わず採用して事業継続を図り、機動的農業に取り組んでいます。このことから、企業的感覚を持った経営体を育成して、その中で担い手の確保を進めていくべきかと考えます。

 (3)のコメの生産調整は、わが国の経済が市場経済であり、需給バランスが崩れれば価格は上下することは明らかです。経営が安定する価格を求めるのであれば、生産調整が必要であり、これが失敗し現在の価格より下落すれば、コメ生産農家の経営が成り立たないばかりか、日本農業全体が相当の打撃を受けることとなるでしょう。

 (4)の遊休農地の問題は、中山間地の多くが抱えているもので、もともと傾斜地だった土地を開墾して農地化し、現在は利用できず荒廃となっています。これを農地除外したり、平たん地で農地として利用していない者に、利用を促したり何らかのペナルティーを課すことで解消が進んでいくと思います。(5)の経営安定は、今後、進展が予想される世界貿易機関(WTO)の条約の決着内容と密接に関連してくることであり、時間的余裕のあるうちに経営力強化を図っておくべきでしょう。

 (6)の中山間農業については、もともと規模が小さくて競争力を持てず、今日の合理化の波に乗れなくて、経営の体をなせずに若者が流失してしまった結果、衰退の一途をたどっています。中山間農業の果たす役割にもっと経済的評価を加え、若者が村に定着できる環境をつくるべきだと考えます。と同時にわれわれも求めるばかりでなく、打ち出された新政策に積極的に協力しなくてはならないでしょう。





(上毛新聞 2009年4月1日掲載)