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弁護士  上野 俊夫(館林市本町)



【略歴】中央大第二経済学部卒。2002年、司法試験合格。都内の実家を離れ、母のふるさと群馬の法律事務所に入所。08年4月、館林市で開業。一橋大大学院修士課程在学。


保証人のリスク



◎自ら返済する覚悟で



 「保証人から外してもらうことは可能でしょうか」。相談者が不安な表情ですがるように聞いてくる。

 このような質問を受けるたび、どう答えればいいのか苦悩する。あるケースでは、一千万円の返済の保証人になっていたところ、借り主が蒸発してしまい、保証人が返済を求められていた。相談者のセリフはたいてい決まっている。頼まれるとき「迷惑はかけないから」とか「サインするだけだから」などと言われ、自分には害が及ばないと思ってサインしてしまったというものだ。そして、「まさかこんなことに(借り主の蒸発や破産)なるとは思わなかった」と言う。

 保証を外せるかという質問への法の回答は冷たい。すなわち原則として保証を外すことはできない。貸し主側としては、借り主が返せなくなったときのための保証人なのだから、借り主が返せなくなったときに保証を外されたら保証人を付けた意味がないからだ。

 このようなトラブルが日本では欧米と比べ多いと思う。これは日本と欧米の契約に対する認識の違いから生まれるのだろう。欧米は昔から契約を中心に社会が成り立ってきた。だから、欧米人は契約がどういうものか知っているし、一度契約を結ぶと簡単には解約できないことも理解している。これに対して私たち日本人は、契約という概念が社会に持ち込まれてから日が浅いので契約に対してあまりなじみがない。私も法律の勉強をするまでは契約というものが何なのか漠然としていた。契約をただの約束ぐらいに思っていて、いつでも解約できると勘違いしている人も多いのではないだろうか。

 しかし、契約は、一度書面にサインすると、相手が義務を履行しないなど解除できる正当な理由がない限り解約できない。保証契約でいえば、前述の通り、原則として解約できないと思った方がよい。そして一度保証人となったら、保証した額を自分が返さなくてはならなくなるリスクがあり、そのリスクが高いことを覚えておいてほしい。

 従ってもし、「一千万円の借金の保証人になってくれ」と頼まれ、保証人を受けるなら、一千万円を自分で返済する覚悟が必要だ。他方、そのような覚悟が持てないなら、義理と人情に流されず、きっぱり断らなければならない。誤解を恐れずに言ってしまえば、「保証人になってくれ」というのは、「一千万円くれ」と言われているのとさして変わらない。だから、仮に断りづらい人からの頼みでも、「一千万円くれ」と頼まれていると思って、勇気をもって断ってもらいたい。




(上毛新聞 2009年4月6日掲載)