視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
全国学校栄養士協議会副会長  松本 ふさ江(みなかみ町上津)



【略歴】聖徳栄養短大卒。民間給食会社勤務を経て、1973年から利根沼田地区の学校給食センターに勤務。2007年から昭和村学校給食センターで管理栄養士。


食育の推進



◎健康を培うために



 ひときわにぎやかさを増す新学期の給食が始まりました。新入生たちの給食時間のかわいい、元気いっぱいの笑顔は、栄養士たちの心強い応援団です。特に人事異動の行われる新学期は、給食に対し良くも悪くもご意見をいただくことになり、栄養士たちも緊張する毎日ですが、この一年生パワーに励まされています。

 学校給食の実施環境は、市町村によって大きな差があります。給食費や調理施設の設備状況、調理作業の人員配置、食器や食缶の形態、給食の配送方法などすべてにおいて異なるため、毎日目の前に並ぶ給食は、近隣の市町村とは単純に比較できない、多くの要素を持ち合わせています。

 四月一日から施行された「改正学校給食法」では、その目標を「食生活の改善」から「食育」へと重心を移し、食育を知育、徳育、体育の基礎となるべく、「生きる基本」と位置づけたうえで、学校給食を活用した食に関する指導の実施が新たに規定されました。新学習指導要領でも、「総則」の中に初めて「食」の文言が明記され、児童生徒の発達段階に応じた指導を、家庭科および保健・体育科など教科の時間をはじめ、特別活動などあらゆる場面や機会をとらえ、食育の積極的な推進が求められています。しかし、その積極的な推進力となる栄養教諭の配置は、その可否が県の裁量下にあるため、都道府県によって100%に近い配置がされている県や、10%未満の配置に留まる県など配置状況はさまざまです。

 いずれにしても、学校の年間指導計画に食育が位置づけられ、教育として児童生徒が自ら、生涯にわたる健康を培う力を身につけるための手だてを講ずることは急務です。「食」を起因とする肥満、痩身(そうしん)、貧血、高コレステロール、高中性脂肪、子どもたちの健康不安の増加傾向は、全国各地で実施している健康調査結果などでも明らかです。私ども栄養教諭・学校栄養職員は、この課題に取り組むために、教職員、保護者、地域の方々など多くの関係者と連携することが重要であると考えています。

 給食を通して子どもたちの健康教育をするためには、まず安全でおいしい給食にしなければなりません。おいしい給食作りには調理職員の熱い情熱は不可欠ですが、施設、設備などの実施環境を整備していくことも関係者の理解と連携無くしては成り立ちません。一食の給食には、健康の保持増進のみならず、感謝の心、食文化など子どもたちに伝えたい、多くの思いが込められています。そんな思いを伝えるためにも、新学校給食法とともにあらゆる体制の整備に向け、一歩一歩前進しなければなりません。「給食大好き!」という、笑顔いっぱいの応援を受けながら。





(上毛新聞 2009年4月9日掲載)