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東洋大国際地域学部准教授  子島 進(東京都板橋区)



【略歴】鹿児島県生まれ。総合研究大学院大修了。博士(文学)。2004年から東洋大国際地域学部教員。同学部の学生たちとフェアトレードの研究と実践に従事している。


フェアトレードの魅力



◎委託で広がる活動



 今回は、途上国の生活支援を第一の目的とするフェアトレードの人気の理由を考えてみましょう。

 まず、なんといってもお買い物で国際協力できるという気軽さ。Tシャツを買ったり、紅茶を飲んだりという日々の生活の一部が、そのまま国際協力になる仕組みをフェアトレードは作ってきました。これによって、「国際協力とは、海外の農村や都市のスラムに行って、井戸を掘ったり学校を作ったりすること」という思い込みから、私たちは自由になることができました。

 もちろん、世界の各地で支援に取り組む専門家は必要ですが、誰でもがなれるわけではありません。さらに、国際協力の専門家さえも、その人の一生を通してみれば、日本で過ごす時間の方が圧倒的に長いはずです。国内で、いつでも誰でも気軽にできる活動が注目を集めていることに納得がいきます。

 次に、フェアトレードは商品を買うだけでなく、売り手としても参加できるところが強みです。いくつかのフェアトレード団体では、市民を活動に巻き込む仕組みとして「委託販売」を採用しています。これは、私たちの側からすれば、「町のお祭りで販売したい、でもお財布はさびしい」という時に、商品を無料でそろえられるということです。どの団体も請求額はだいたい八掛け、つまり定価千円の商品に対して八百円ですから、五万円分売れば一万円の利益となり、参加費やディスプレーの経費等をそこから出せます。

 ただし、まったくリスクがないわけではありません。野外イベントで雨が降れば、まったく売れないかもしれません。委託ですから原則返品できますが、最低限の売り上げライン(たとえば25%)を設けているところもあります。また、カレースパイスやドライフルーツなどの食品類は「買い取り商品」であり、返品不可ですから、注意が必要です。

 ボランティアでやって赤字を出したり、売れ残り商品を抱えると本当にめげます。子島ゼミでも「これは売れる」との思惑が外れたり、「買い取り」と「委託」を混同するなどの失敗を繰り返し、いろいろと痛い目を見てきました(そのおかげでだいぶ鍛えられました)。

 しかし、上記の点に注意すれば、委託はまずまず安全です。昨年十月に、館林市の中学生と行った販売では、たった一日で八万円を売り上げ(委託額は十二万円)、コーヒーやチョコレートもめでたく完売しました。このような成功体験を積み重ねていくことによって、フェアトレードの楽しさは広がっていきます。






(上毛新聞 2009年4月14日掲載)