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体験型古民家民宿かじか倶楽部店主  米田 優(南牧村大日向)



【略歴】北海道出身。日本大中退。千葉県内の私鉄に勤務、労働運動に携わる。国会議員公設秘書を経て、2006年に南牧村で手打ちそば店、07年に体験型古民家民宿を開業。



アクションプラン



◎築50年の古民家に感動



 南牧村の手つかずの自然、そして農業・産業遺産。戦国時代から昭和中期までの間、この山村地域で砥石(といし)の採掘、養蚕、コンニャク栽培、林業が盛んに行われていた。それ以降、これらの産業が衰退し、苦労して築き上げた「段々畑」にも杉が植林された。国策でもあった植林事業は、将来を見越してのことだったろうが、安価な外材の輸入で、間伐もままならず、村の主産業のすべてを失い、過疎化の一途をたどってきた。

 そんな南牧村の活性化を夢見ながら開店した「手打ちそばかじか小屋」。早朝から仕込みや開店準備に追われる毎日だが、村おこしの拠点として位置づけた以上、交流人口の増加に向けて、手つかずの自然や、段々畑を内外にアピールするためのアクションプランが必要になる。IT社会の中で、インターネット活用が不可欠であることは十分承知しているが、これまでの知識ではメール程度である。

 団塊世代のIT音痴、自作のブログやホームページの作成など考えたこともない。老体にむちを打ちながら、「六十の手習い」に思わす苦笑してしまうほどだが、「田舎暮らし」をテーマにしたブログの作成に取りかかった。悪戦苦闘の末やっとの思いで完成させた。

 そんなある日「グリーンツーリズム」という文字が目に飛び込んできた。言葉は知っていたが、その意味まで掘り下げたこともなく、新鮮さを感じた。

 不思議なものである。グリーンツーリズムに出合って間もなく、役場の空き家対策担当者から、村の最奥に位置する星尾集落の空き家の話が持ち込まれ、早速見せてもらった。目からうろこが落ちるとはこのことだろうか。築五十年の古民家だが、日本の伝統建築を象徴するような建物で、「なんでこんな山奥に」と思いながらも、南牧村の過去の隆盛と奥深さをまざまざと見せられた。

 その家に感動し、使用目的を考える間もなく、賃貸契約を結び、「山小屋」でもやろうかという、漠然としたイメージであったが、役場の担当者から、「グリーンツーリズムと農家民宿開業支援講座」の話を聞かされ、これだという思いに駆られた。

 農家民宿開業に向けて、自力で古民家の改装に取りかかるとともに、県窓口の開業講座も受講した。主催は農水省直系の「○○機構」だが、内容は「支援講座」ではなく単なる説明会で、「あぁ~役所的だな~」という印象であった。グリーンツーリズムとは、「農山漁村地域の活性化」を推進するために、都会と田舎の交流を旗印にした政策のはずだが…。またしても厳しい試練が待ち受けている予感がした。




(上毛新聞 2009年4月23日掲載)