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NPO法人あそびの学校代表理事  山崎 茂(藤岡市三波川)



【略歴】東京都出身。中央大卒。埼玉県富士見市職員を経て、2001年、藤岡市(旧鬼石町)に「三波川ふるさと児童館・あそびの学校」開設、07年、子供の遊び場開設。



あそびの中で育つ



◎学びそのものを楽しく




 藤岡中心市街地の駄菓子屋付きあそび場「ALWAYSあそびの学校」でのこと。「おっちゃんほら! 手首をこう手前にして入れると、ベイが下から斜めに入り飛ばせるよ」と五年生。ほかの子は「ベイを上から坂を滑らせるように入れると加速がつきぶっ飛ばせるよ」と次々に私に言ってきます。五、六人で「チッチーのチー」と一斉にベイゴマを入れるバトルロイヤル。すると「おっちゃん、なんでかけ声いつもチッチーのチーなの? チッチキチーじゃだめ?」とか。また、私がみんなのベイをはじき飛ばし「よっしゃー」とガッツポーズをすると「大人げないな、おっちゃんは」と悔しがり、しつこく戦いを挑んできます。私は、こんな時、それぞれの子どもを横目で見ながら「みんなあそびにのめりこんでいるな」「本当に子どもってあそびの中で育つんだな」とつくづく思うのです。

 しかし、私自身が子どもと必死にあそびきってない時や、ゆとりがない時には、このことが見えません。

 特に、ここ数年はあそびきっていない(ストレス解消や気晴らし、気まぐれのあそびになっている)子が多く、あそびへの興味づけや導入、話しかけなど、とても苦労し、疲れます。子どもも察して「おっちゃん! 今日ちょっと元気がないな、悩みでもあるのか」と反対に慰めて?くれます。そんな時、ふと頭をよぎるのは、さぞ学校の教師も大変だろうなということです。

 折しも今、学校は、新学習指導要領で「ゆとり教育」を見直し、学力向上を目的に学力テストが実施され、さらに授業時間が増えようとしています。

 学力をしっかり身につけるということはとても大事ですが、その身につけ方や学力の内容がより重要だと思います。

 それは、私が子どもとのあそびの中で感じた「あそぶ中での育ち」や「子どもが熱中してあそぶことそのものが発達」という、子どもと遊ぶ中で見落としやすいことと共通なものだと思います。要するに、学校での学びはあそびに熱中した時に面白いのと同じように、例えば、テストの点数などの目的の手段として行われるのではなく、それ自体が面白いし、いつまでもやっていたいと行われるときにこそ、深く身につくということです。

 そういう意味で、学校の教師にこそ、子どもにとって学びがあそびと同じように楽しくなるように「ゆとり」を求めたいと思います。

 そのために、教師を増やすことや休息・余暇時間の保障、少人数学級の実現等が重要ですし、なによりも、その「ゆとり」の獲得を妨げるあらゆるものから教師を守ることだと思うのです。





(上毛新聞 2009年5月1日掲載)