視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
県臓器移植コーディネーター  稲葉 伸之(館林市大島町)




【略歴】新日本臨床検査技師学校卒。千葉県内の病院に勤務後、青年海外協力隊に参加。帰国後、県立がんセンターを経て総合太田病院ME課(臨床工学)に勤務。



臓器移植法施行12年



◎改正への審議に期待




 臓器移植法が一九九七年十月に施行されて十二年が経過しようとしている。現在までに八十一例の脳死下からの提供があり、そのうち、国内で心臓移植を受けた人は六十四人、海外で昨年十一月までに心臓移植を受けた人は九十二人、国内より海外での移植数が多く、その大半が子供である。現在の日本の法律では、臓器提供に年齢制限があり、十五歳未満の臓器提供ができない。大人から子供への心臓移植は心臓のサイズが違うため移植ができず、国内では子供の心臓移植を受けられる機会がほとんどない。

 海外の心臓移植では、莫大(ばくだい)な費用がかかることから、多くの患者は募金など行っている。家族の精神的な負担も大きく、移植までのリスクも多いため、途中で亡くなる患者さんもいる。また、受け入れる国も少なく、アメリカでは5%を日本も含めた海外からの移植への枠としてきたが、その分、アメリカでも5%の患者が移植を受けられずに亡くなっている。

 同法付則の第二条には「この法律による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする」と明記されている。

 現在、会期中の国会には約三年前に議員立法として提出された「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」として三案が審議中である。脳死も人の死として考え、臓器提供が認められる年齢制限をなくし、本人の提供の意思を尊重しつつ、意思表示がない時は家族の判断で提供を可能とし、配偶者と親子間では親族への優勢提供を認めるのがA案である。B案は、現行法の提供年齢制限を十五歳から十二歳以上へと引き下げ、親族への優先提供を追加した。C案は、脳死判定の基準や手続きを厳密にすることや、生体間移植について必要な規制を定めることなど、現行法よりさらに慎重さを求めている。

 WHOは世界移植学会の「イスタンブール宣言」に基づき、自分の国の患者に必要な臓器は、自分の国で確保することを強く勧めており、今月、WHOの総会で決議される予定である。最近、患者会や学会などはこの「渡航移植禁止」を踏まえて、臓器移植法改正に向けての陳情や集会などを活発に行っており、今の国会で審議がなされ採決されることを期待している。

 「臓器提供意思表示カード」は、ドナーカードではない。臓器提供をするかしないか、自分の臓器提供の意思を表示できるカードである。法の改定だけでなく、国民も真剣に自分の臓器提供について考え、いざという時の自分の意思を表示できるよう日ごろから備えたいものである。






(上毛新聞 2009年5月2日掲載)