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北越製紙研究所主幹  清水 義明(新潟県長岡市)



【略歴】高崎市出身。高崎高卒。東北大工学部資源工学科卒。同大学院修士課程修了。1979年から北越製紙勤務。現在、同社研究所研究員。紙パルプ技術協会会員。



紙の機能



◎独自性求めて残す道を




 私たちは毎日の生活の中で、意識することなく紙を使っています。ノート、トイレットペーパー、新聞紙などおなじみですが、他にもたくさんの種類の紙があります。剣道の胴当てに使われている硬い素材も、実は紙を薬品処理したバルカナイズドファイバーという紙を加工して作られます。

 紙の歴史は2000年といわれています。紙は人間が自ら発見(発明)し、それによって文明を形成していく礎となった火や鉄に匹敵するほど、原初的で画期的な道具と考えられます。

 古来、パピルスに代表される草本類(草)、木簡、竹簡などが記録媒体の材料として使われていましたが、19世紀半ばにドイツで、木材を機械的にすりつぶしてパルプを作る技術が発明されてからは、本格的に木材へと材料の転換がなされました。現在では、合成繊維紙(ガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維)、合成紙(PP、PET)、電子ペーパー(合成樹脂)など、木材以外の材料も多く使われています。

 機能とは「もののはたらき」「作用」のこと。紙を機能の視点から見ると、(1)書く・読む(write&read)(2)包む・運ぶ(wrap&transport)(3)拭ふく・捨てる(wipe&waste)(4)その他の特殊機能(work)―の4つに分類することができます。

 最初の3つは、紙の3大機能と呼ばれ、(1)は記録媒体として、書籍、新聞用紙、印刷用紙、情報用紙などがあり、(2)は、包装用紙として箱、段ボール、封筒などがあります。(3)は、吸収する機能でもあり、衛生用紙としてのトイレットペーパー、おむつなどがあります。(4)は、ベースとなる木材繊維に他の機能性素材を配合(混ぜる)、塗工(塗る)、含浸(含ませる)して特殊な機能を持たせた紙です。導電紙、絶縁テープ、透明紙、遮光紙、偽造防止の金券、脱臭紙、抗菌紙など、種類が多いのが特徴です。

 この他の機能として手すき和紙は視覚、触覚といった心理に訴える感性機能があると言えます。和紙の持つ美しい風合いや手触り感は、他の素材では替え難い独特の機能があるようです。

 紙は生活に密着していますが、一方で紙は将来なくなるという予想もあり、書籍をはじめ、新聞用紙、チラシなどは、電子メディアに移行するといわれています。紙でなければ出せない機能を追求することで生き残る道はあるはずです。

 「紙」と「神」は同じ「カミ」と発音しますが、「紙」には、高位、高貴の存在である「神」とのつながりがあるのではないか。特に白い紙は、神事に使う榊(さかき)や神棚の注連縄(しめなわ)に付けられていて清浄で神聖なイメージがあります。これも紙のひとつの機能と見るかは別にしても、大木が白い紙に生まれ変わること自体、神秘的ではありませんか。





(上毛新聞 2009年6月10日掲載)