視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
群馬大名誉教授  斎藤 三郎(桐生市川内町)




【略歴】群馬大、東京工業大博士課程を経て、今春まで群馬大大学院工学研究科教授。再生核の理論を研究、専門書、入門書も執筆。若い世代に数学の魅力を伝える活動にも力を注ぐ。


空虚な日本社会



◎危機感持ち立て直しを




 バブル崩壊後の日本社会の特徴として、いたるところに現れた借金財政、無責任な責任者の態度とそれを許している社会、経済の停滞、精神の空白と無気力、教育の空洞化―などが挙げられる。

 国、地方合わせて1000兆円を超える借金を抱えているにもかかわらず、政治家もマスコミも危機感が足りなかったと言えよう。国防の最高責任者が接待漬けで、大臣がどこの国の国防大臣か分からないような発言をしていたのである。

 各地の商店街はシャッター通りと称されて衰退を続け、農村も荒廃を続け、多くの若者は派遣社員として不安定な状況に追い込まれている。教育は、ただ勉強して良い大学に入ることを考えればよいという状態に退化したり、無気力に陥ったりしていて、本来の教育の理念さえ失っている。

 これらは氷山の一角であり、そこに現れたのは、中身の薄い空虚な社会である。評価を得るために、よくやっているように見せかける書類作りや講演会などのセレモニーの繰り返し、パンフレットや報告書が社会にあふれている。評価されるべき元のもの、本務に取り組む時間と資金をそんなことのために浪費している状況がいたるところで見られる。公務員はいわゆる「親方日の丸」。税金がひとりでに入ってくるように感じている風潮で、貴重な税金という考えが足りない。

 これらを変えるにはどうしたら良いのか。

 橋下大阪府知事のように、地方を、国を立て直す気迫ある若者たちの立ち上がりと国民的な奮起を期待したい。それにはまず大きな負の仕事を減らし、公務員の財政意識を高め、綱紀を引き締めることだ。「公僕精神」の初心にかえり、国、地方の立て直しに取り掛かるよう求めたい。危機意識を国民が共有して立ち上がる必要がある。国、地方の豊かさはすべての基礎になるから、地域ごとの経済再建にも努力していきたい。教育界も無気力、無責任な状態であり、抜本的な取り組みと検討が必要である。

 幕末、明治時代には、しっかりしないと外国の侵略を受けてしまうという危機感と連帯感があった。今しっかりしないと国が衰退してしまうという思いで、国民が立ち上がるべき時である。それらを展開する基本は、有能な人材を要所に配すことである。活力ある人材によって、沈滞した社会を再生させる必要がある。

 国家は戦争や地震などの災害によって滅ぶことがあるが、多くの場合には、戦後50年以上たって内部から衰退するものである。そうした過去の世界の歴史を想起したい。






(上毛新聞 2009年7月17日掲載)