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特定非営利活動法人エコライフ理事長  石関 和泰(下仁田町大桑原)




【略歴】宇都宮大大学院修士課程(農学専攻)修了。国際農業者交流協会欧州支部長などを経て、下仁田町の日台農業振興会で業務部長。



変化する子どもの環境



◎成長への影響検証を




 ドイツで「マウス」という愛称で呼ばれるネズミをキャラクターにした子ども向けの番組があります。すでに放映されてから30年以上経過していますが、今でも親子で楽しめる番組として親しまれています。日本では「だいすき!マウス」としてNHKで2005年と06年に放映されましたので、ご存じの方もおられると思います。

 内容は、例えば電気はなぜつくのか、あるいは電話はどのようにして通じるのかなど、私たちの生活に密着した興味ある題材を取り上げ、その仕組みや道理を分かりやすく解説したり、社会で行われている仕事の内容を紹介したりするものです。また、マウスとそれより小さなゾウが繰り広げるほのぼのとしたアニメの寸劇などもあります。

 ドイツでは小学校4年生の時に次年度の進路選択に直面します。このとき、小学校で進級できず、同じ学年を2度繰り返した場合等を除けば、9歳で進路を選択し、10歳から選択した学校へ通うことになります。その際、職業学校も選択肢の一つになりますので、早い段階で仕事に関する意識付けを行う必要もあることでしょう。

 その点、この番組は子どもたちの、社会への関心を高める側面も持ち合わせています。総じてこれは子どもたちのことを考えた健全な番組と言えます。

 翻って、わが国の現状をみてみますと、かつてはゴールデンタイムやお茶の間の時間といわれていた時間帯に、ワイドショー的なタイトルが目に付くようになってから久しく、「おいしい」を連発したり、騒がしい内容の番組が多くなったと思われる方も多いのではないかと思います。

 また、二昔以上前に漫才ブームが起きたとき、「今の笑いはできるものができないものを笑う、強いものが弱いものを笑う。このような笑いはどこかおかしいのではないか」と言った芸能関係者がいました。しかし、この忠告は省みられることなく、時は流れ、現在は弱いものを笑っていた人がテレビ番組の司会を行う時代になりました。

 これらはテレビを事例としたものですが、そのほか、子どもたちを取り巻く環境をみてみますと、ゲームや携帯、インターネット等が普及する半面、子ども同士が集まり外で遊んだり、家の手伝いをしたりする機会は減少しました。

 これらの変化が子どもたちの成長にどう影響を及ぼしているかについては正しく検証されなければなりませんが、次世代を担う子どもたちの将来にとって、何が有益で何が有害なのか、私たちは今の社会をもう一度見直すべき時期にきているのではないでしょうか。





(上毛新聞 2009年7月22日掲載)