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キッズハウスコモック経営  石井 浩行(大泉町住吉)  




【略歴】日本写真芸術専門学校卒。山岳、アウトドア雑誌の編集を経て、太田市内におもちゃ店を開店。木製を中心にぬくもりのあるおもちゃを10カ国から取り寄せている。




タイの玩具メーカー



◎徹底した環境への理念




 現在、木のおもちゃの原材料の多くに「ゴムの木」が使われているのをご存じだろうか。

 ゴムの木は25年でラテックス(ゴム樹脂)が採取できなくなり、その役目を終える。その後は伐採、焼却、廃棄という負のサイクルをたどっていた。

 今から二十数年前、その不用になったゴムの木をリサイクルし、木のおもちゃとして再生させた企業がタイにある。プラントイ社という、木製玩具専門のメーカーだ。

 先日、そのプラントイ社の主催する環境研修プログラムに参加するため、タイの南部に位置するトランを訪れた。原材料となるゴム農園でのラテックス採取を見学することから始まり、伐採後の製材加工、プラントイ本社工場での製品加工―などを工程順に見ていった。

 事前の知識として、プラントイというメーカーが、いかに「環境」に配慮したおもちゃ作りをしているかは知っていたつもりだった。伐採される3年前から化学肥料を与えない有機栽培の原材料に始まり、製造工程で使われる水溶性塗料。木と木を接着する際に使われるノンホルムアルデヒドの接着剤。商品パッケージには水溶性インク以外に、植物性大豆を原料にしたソイインクも使われていた。

 現場を見て分かったことは、そのどれもが徹底しているという点だった。現場を見る前にイメージしていた「この程度だろう」をはるかに超えていたのだ。見学の途中からは、おもちゃ作りの工程を見ることよりも、「ここまで徹底できるのはなぜだろう」に興味が働いていた。

 初日のプログラムが終わり、2日目のプログラムにあるパネルディスカッションやワークショップなどを通して、これかというものが伝わってきた。この会社にはしっかりとした理念がある。木のおもちゃを通して地球環境を守る、という理念がすべてにおいて徹底していた。

 少し前まで、経済立国の先頭にいた日本のそれぞれの会社は今、どうだろう。素晴らしい企業理念を持った会社はいくらでもあるだろうが、はたしてそれを第一にした企業経営ができているだろうか。

 私の小さな店にも理念がある。「子どもが主役になれるおもちゃを世界中から」がそれになる。タイから帰国して少したった今、木のおもちゃに携わって4年がたった今、あらためて自分がおもちゃ屋としてもった理念に立ち返ることができた。






(上毛新聞 2009年9月5日掲載)