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NPO法人手をさしのべて理事長  桜井 信治(高崎市寺尾町)  




【略歴】県内22団体で組織する不登校ひきこもり支援団体ネットワーク代表。学習塾グローイング代表。高崎市まちづくり市民会議、県教育問題県民懇談会の各委員歴任。



情報社会の落とし穴




◎正しい使い方学んで




 インターネットが普及し、携帯電話の所持率も高くなり本当に情報化社会になってきたと感じています。最近の問い合わせのほとんどがネットでの検索で来ています。それゆえの危険も多くなってきているようにも感じています。相談の内容から考えると、そんなところに依存してしまった問題が増えてきているように感じます。確かに便利になってきました。キーワードを入れると知りたい情報が手に入りますし、何より時間が大幅に削られます。しかし、その代償として失ってしまっていることがあるのではないでしょうか。

 私は不登校ひきこもり支援のNPOの理事長でもありますが、塾の経営者でもあります。最近の子どもたちを見ていると、この情報社会に漬かってしまい、調べるという作業をしなくなってきています。そんなこともあり、文章問題など、考える、調べる、聞く―という大切な作業が抜け落ちてしまっています。便利なものに対しては、それなりの使い方を学ぶべきだと思います。

 知らないということは、学ぶチャンスもそこにあると思います。知らないことを調べるということは、そこに無い知識を身に付けることになります。しかし、その方法が問題なのではないでしょうか。ネットで調べるというのが、今は主流だと思います。そこで何の知識も無いままその情報をうのみにしてしまったらどうでしょうか。そこに落とし穴が潜んでいます。

 いろいろな情報が簡単に手に入るということは当然ですが、間違えた情報も入って来てしまう危険があります。やはりこんな部分でも多少の知識が必要となってくるのではないでしょうか。こんなことを考えていると、便利になってきたことは学ぶチャンスが少なくなっていると考えられるかもしれません。

 無知ということは決して恥ずかしいことではありません。むしろ知らないでいることが大切なときもあります。しかし、無知であることに気付いているのに、そのままほっておくことは、一番怖いことかもしれません。

 最近の相談でのネット依存傾向の子どもをみていると、言葉では確かに立派なことを並べることができます。しかし、そこに行動が伴ってこないということが多々あります。また、保護者も、そんな子どもを見て安易に障害や病的であると判断してしまい、問題を大きくしてしまうこともあります。

 情報社会は確かに進んでいます。また、それに伴うリスクも発生しています。それらを少しでも軽減するために、正しい使い方を知ってほしいと感じます。






(上毛新聞 2009年9月6日掲載)