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日本愛妻家協会事務局長   山名 清隆(神奈川県川崎市)  




【略歴】静岡県出身。広報企画会社「スコップ」代表。褒める気持ちで首都高の事故を減らす計画や、嬬恋村でイベント“キャベチュー”を行う日本愛妻家協会などを企画。



キャベチューの奇跡



◎愛妻家への感動が歌に



 どうしていつも晴れるのか。男が愛を叫ぶと晴れるのか。前日の雨を吹き飛ばす絶好の「叫び日和」の13日、嬬恋村で「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ」(キャベチュー)が行われました。人里離れた標高1250メートルのキャベツ畑の真ん中にある小さな丘にざっと300人。駐車場には大阪、名古屋など遠方ナンバーが並び、観光バスもやってくる。今年は中国とニュージーランドの人もいて国際色がプラスされた。

 いつもそうですが、胸に秘めていたであろう感謝の言葉や心から謝罪する言葉を叫ぶと、大きな拍手がおこります。そうすると、不思議なことに見ていた人も次々に叫び台にやってきます。夫婦にしかわからないことでも、叫ぶ人の表情でその大切さは周りに伝わります。そこは大胆さと勇気をたたえる場になります。誰かのまっすぐな正直さはほかの誰かに響きます。そうすると場所全体の空気がすがすがしくなります。正直さって、うつるんだなあとつくづく思うのです。

 今年のキャベチューで僕たちは奇跡のような出来事に遭遇しました。きっかけはテレビでした。6月に関西の人気番組で愛妻家協会を紹介するコーナーが放送されました。その2カ月後、僕あてに大阪在住の若手歌手の日高慎二さんという人からメールが来ました。「放送を見て感動し一気に曲を作った。できればその曲を、番組の中で奥さんに感謝の言葉をささげた嬬恋在住のAさんにプレゼントしたい」というのです。

 なんてすてきな申し出。僕もひらめいてすぐに電話を入れました。「その曲をキャベチューの日に『愛妻の丘』で歌ってみませんか」と。「行きます」と即決定。この偶然の流れに、キャベチューを進める誰もがわくわくしました。聞けば日高さんは若くしてガンの治療を経験し、同じ病気を克服したAさんに自分を重ねたそうだ。そんなAさんが奥さんに言った「一緒になれたことが生きた証だよ。ありがとう。愛している」の言葉が胸に響いて曲を作ったというのです。

 キャベチューの5日前、Aさんが亡くなったという知らせが入りました。僕たちはそのとき衝撃で言葉をなくして戸惑いました。Aさんは知っていたのか、この日が近いことを。僕たちは何度も何度もAさんがインタビューに答えるシーンを見直しました。そこには生前の穏やかで優しくほほえむAさんの姿がありました。最後にAさんは言います。「素直って、すてきだよね」と。僕たちは今年のキャベチューをAさんにささげることにしました。

 50人もの人がさまざまな愛を叫び終え、今年も温かい空気が丘を包んだ。後片づけが終わったところで、僕たちは輪になって青空に向かってAさんへの感謝の言葉を叫びました。




(上毛新聞 2009年9月24日掲載)