視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
北越製紙研究所主幹   清水 義明(新潟県長岡市)  




【略歴】高崎市出身。高崎高卒。東北大工学部資源工学科卒。同大学院修士課程修了。1979年から北越製紙勤務。現在、同社研究所研究員。紙パルプ技術協会会員。


古紙再生



◎求められる質への配慮



 古紙の再生は、古くは奈良時代から行われていたとされていますが、記録として残っているのは平安時代です。紙が貴重だった時代の再生は漉(す)き返しといって、古紙を引き裂き、灰で煮て洗う簡単な作り方でした。江戸時代にはこれを専門にしている「漉き返し業者」がありました。

 循環型社会を実現することは、資源の少ない日本にとっては大切な課題です。解決策として、(1)ごみの量を減らす(リデュース)(2)繰り返し何度も使う(リユース)(3)資源として再利用する(リサイクル)の3Rがありますが、その中のリサイクル「古紙の再生」について考えてみましょう。

 古紙のリサイクルに関して、古紙再生促進センターから毎年、回収率と利用率の数字が公表されています。利用率とは、回収された古紙が紙に再生される割合をいいます。古紙の利用率は年々向上しており、昨年の統計では紙の原料に6割以上の古紙が使用されるまでになっています。背景には、メーカー、自治体、消費者、リサイクル業者などの連携のほかに処理技術の進歩があります。新聞紙や板紙、段ボールの8~9割以上に古紙が使われていますので、利用率で見れば古紙はリサイクル・省資源の優等生と言えるかもしれません。

 現在の古紙再生で中心となるのは、「脱墨(だつぼく)」という技術です。私が入社したころはまだ脱墨が完成されておらず、技術改良の試行錯誤を重ねた経験があります。この技術は、鉱山の浮遊選鉱法(泡で有価鉱物を回収する技術)を応用したもので、紙の中のインキを泡で抜くフローテーション工程に生かされています。古紙を素材として使うには、このほかにも多くの長大な設備、膨大なエネルギーや水、薬品を必要とします。

 これに対して、環境への影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)という手法を、リサイクルにも適用していこうとする取り組みが始まっています。ここでは素材として新しいパルプか、エネルギー多消費である古紙かの二者択一ではなく、紙の製品としての価値を最大化し、環境負荷を最小にする仕組みの設計が必要であるとしています。リサイクルの利用率や回収率の多寡でなく、再生の中身(質)に配慮するということでしょう。

 経済性や白さばかり追求するのではなく、省エネや廃棄手法(環境負荷)まで考慮した仕組みの構築が望まれます。

 今、至る所で叫ばれている持続可能な社会は、現在の社会の在り方からかけ離れた所にあります。使い捨て、暖衣飽食の時代にあって、資源やエネルギーを無駄にしないリサイクルとは何か。そのためには、社会の構造的な問題に外の視点から目を向けていく必要がありそうです。






(上毛新聞 2009年9月28日掲載)