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県農業法人協会長   武井 尚一(富岡市宮崎)  




【略歴】高崎商高卒。脱サラし、1989年から農業に従事。98年に有限会社「武井農園」を設立、農産物のブランド化などに取り組む。富岡市認定農業者協議会長。




農業の再生のために



◎若者呼び込める環境を




 「農業は国の基幹産業」とされているが、08年の農業産出額は8兆2千億円、基幹的就農者は197万人、その中で65歳以上が60%となっている。07年には農家出身の39歳以下の就農者が5760人、他が6240人、計1万2千人という状況の中、農業所得や就農者ともピーク時の半分となり、基幹産業の農業は沈みかけた夕日のごとくである。

 新政権を担う民主党は、「農業の再生」を政策としてかかげ、その中に「個別所得保障」制度がマニフェストに盛り込まれている。これ以外にも諸政策が公約にあるが、急務となっている農業の担い手の確保問題が解決できるのか疑問である。もうかる農業で給料もどんどん払えれば、たちまち解決するのであるが、実際は若者を呼び込める状況ではない。

 日本農業の実態は、年間10万人くらい入って来ないと持続していかない状況にあり、それには若者を呼び込める環境の整備が一番の政策として求められる。

 08年の農業生産法人は1万519社あり、その中で農業法人協会に加盟している経営体の売り上げ平均は約2億5千万円となっている。どの法人も周年にわたり安定した雇用を確保し、従業員の教育は指導機関と連携しながら教育と定着化に努め、独立を志向する者には応援をし、独立後のフォローもしている。

 実績からして、法人経営を推進して日本農業を託すことが、担い手確保に最も効果が期待できるといえるし、国の内外との競争に打ち勝つためには、もはや法人化が必須といえる。

 最近、栃木、千葉県などでは、若い農業後継者を対象として、地区を分散し経営セミナーを実施している。先の長い若者を鍛えて、今後の農業を展開させようという方針かと思う。セミナーの内容を見ると、業務用農産物の取引・流通ルートの改善・資金の調達方法・労務対策など農業経営者として欠くことのできないことを勉強している。

 このような取り組みは、担い手の高齢化がどんどん進む中、若者に特化して、強い農業経営体を育てていこうとする極めて効率の良い施策と思う。また、国などの政策に振り回されない柔軟性を持った若者が、自己主張のできる経営者に育っていき、後継者が生まれていくことにもなる。

 担い手の確保という問題は、まずそれぞれの経営の中で解決することであるが、これまでの常識を振り回していては解決しない。国や県などは、これまでいろいろな政策で農業をコントロールしてきた。その結果が今日のありさまであり、この際、常識を超えた担い手確保策を打ち出して、農業の持続を図るべきである。






(上毛新聞 2009年10月1日掲載)