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県二輪車安全運転指導員協議会長   池田 伸也(渋川市中郷)  




【略歴】県交通警察モニター連絡協議会会長、子持ライオンズクラブ会長を務めた。現在、渋川交通安全協会副理事長、県自動車整備振興会副会長。06年から現職。



二輪車の速度



◎制動は前後一緒に




 何十年も二輪車に乗っていると、危うく事故を起こしそうになった経験があります。しかし、大きな事故はありません。それは「ヒヤリ」とした体験を忘れずにいるからかもしれません。

 ずいぶん前のことですが、カーブでスリップし、転倒しそうになりました。自分のスピードが出ていたこともありますが、よく見ると路面に油がありました。通過車両のエンジンオイルか燃料か分かりませんが、かなりの範囲に油がまかれた状態になっていました。

 私は右にカーブしようと、二輪車をやや右に寝かせて走っていました。すると前輪は右に向いても、後輪は滑って直進しようとします。幸い転ばずにすみましたが、心臓のドキドキはしばらく収まりませんでした。

 原因は路面の油。しかし、私が速度を抑えて走行していれば危険ではなかったはずです。これを猛省し、以後は法定速度を守るようにしています。

 二輪車の事故の大半は速度超過です。交差する道路がなく、飛び出しの危険がなければ自分の思うままに走れますが、そんな条件の道路はまずありません。自分に降りかかる危険を回避することも自分の責任。それには、速度を出し過ぎないことしかありません。

 法定速度とは、この道路環境は「これ以上出しては危ないですよ」という速度。それを法律で決めてあるものです。

 私はもう一つ、自分の技量に合った速度をそれぞれの人が持つことをお勧めします。これは実際に走っていて自分で感じることです。すいていれば法定速度50キロで走れても、込んでいれば自然に速度が落ちます。

 それなのに「ここは50キロ制限だから50キロ出そう」とすれば危険です。年を重ねると鈍くなるものです。年齢とともに自分なりの速度を考えましょう。

 速度を守ることと同様に大切なのはブレーキです。二輪車には前輪と後輪にかかるブレーキが別々に付いています。自転車と同じです。多くの人は後輪ばかりを使っているようですが、前輪と併用すべきです。

 後輪のブレーキは足でペダルを踏むようになっているので、急制動しようとすると強く踏んでしまうでしょう。すると後輪がロックされて横滑りを起こし、転倒しやすくなります。

 前輪はハンドブレーキ。もし前輪だけを止めようとして強くかけると、やはりロックされてしまい、二輪車から放り出されることになるので危険です。

 だから前後輪を同時にかけることが必要なのです。同時にかければ制動距離も短くなります。二輪車は四輪車より制動距離が短いのが普通ですから、ブレーキはぜひ前後輪一緒にかけるくせをつけてください。





(上毛新聞 2009年10月4日掲載)