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県立女子大非常勤講師   小畑 紘一(東京都北区)  




【略歴】東京都生まれ。疎開で前橋市へ。前橋高、慶応大経済学部卒。外務省に入省しウズベキスタン大使、ヨルダン大使など歴任、2006年3月退職。06年10月から現職。



自然への姿勢



◎意識を変えて謙虚に




 今回で私の担当は最終回となります。これまで県の神社と関係付けながら私たちが現在直面している問題を考えてきました。問題の中心は、人間と自然とがいかなる関係であるのが良いかということでした。われわれは自然のカミに、自然の猛威の前では、鎮まることを祈り、自然がもたらす幸には感謝をささげてきたのです。自分の力ではどうすることもできない世の不思議に対し、それを与えられた運命として甘受して生きてきたのです。それがつい最近までのわれわれの生き方だったのです。

 しかし科学が発達し、これまでの自然の不思議が明らかになるにつれ、人間は自然を支配できるという妄想に取り付かれ、また価値の基準を経済的効率や生活の便利さに置き換え、自然の摂理を無視してきました。その結果われわれは自然の発するメッセージを聞き取れず、自然との間に越え難い溝ができてしまいました。これに対する自然のしっぺ返しは地球規模での大災害です。自然との共存を図るには、われわれの側が意識を変えるしかありません。意識変革とは、「自然は人間がいなくても存在し得るが、人間は自然無しでは存在し得ない」という事実、つまり人間は自然によって生かされているのだということを謙虚に受け入れることです。この視点に立てば、われわれの自然に対する姿勢はおのずとこれまでと違ったものになるでしょう。それは自然の呟つぶやきに耳を添え、それに合わせて生きていくことです。

 ところで、現代社会で、最も恐ろしい自然破壊・人間破壊は核爆発です。単に損害の規模が大きいだけでなく、長期間にわたり地球を汚染し、人間を苦しめます。広島、長崎に原爆が投下され63年もたっている今でも、多くの人が後遺症に苦しんでいます。原爆ほど非道な武器はありません。その意味で原爆を投下した米国の道義的責任は永久に消えないと思います。現在日本は、米国の核の傘で安全が保たれています。将来米国との関係の変化に備え日本は核武装をすべきだという議論が一部でなされています。もし日本が核兵器を持ち、相手の国を攻撃したら、われわれは、広島・長崎で経験したと同じ、いやそれ以上の苦しみを相手に与えるのです。いったいこれで得られる平和とは何なのでしょうか、いったいこれでわれわれは心穏やかに生活できるのでしょうか。原爆のひどさを考えたら、軍事力としての核保有の選択はありえません。

 現在核が世界に拡散しつつあります。これは人類の破滅を意味します。世界で唯一の被爆国民として核の悲惨さを国際社会に知らせることができるのは日本人だけです。今こそ地球を、人類を救うために共に核廃絶のために立ち上がろうではありませんか。





(上毛新聞 2009年10月9日掲載)