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富岡製糸場世界遺産伝道師協会会長  近藤 功(前橋市南町)  




【略歴】前橋高、北海道大卒。教育現場と文化財保護行政を経て伊勢崎女子高校長で退職。「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を目指し、2004年から伝道師協会会長。



伝道師協会結成5周年



◎県民の支持で活動充実




 私たち富岡製糸場世界遺産伝道師協会は、本年で結成5周年を迎えました。始まりは2004年、群馬県が世界遺産推進室を設置し、県民ボランティアを育成するため「富岡製糸場世界遺産伝道師」の養成講座を開催したことです。受講生には、教育・文化財・建築・蚕糸等多彩な履歴の人材が集まりました。この多彩な人材を生かし、活発な活動を展開するため、組織化しようということになり、同年8月に伝道師協会が誕生しました。

 以来、さまざまな活動をしてきましたが、基本は各地に出向いて一人一人にパンフレットを手渡し、パネル解説をし、きめ細かく「富岡製糸場と絹産業遺産群」の普遍的な価値と世界遺産運動を自分の言葉で話して理解してもらうという地道な活動です。

 活動を始めた当初は、「世界遺産になどなるわけがない」といった評価も多く、たいへん厳しい環境でした。しかし、07年1月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産暫定リストに追加記載されて情勢は大きく変わりました。

 「世界遺産の実現で、県民に自信と誇りを!」と語り続けてきた思いが形になり、私たちの活動も順調に展開できるようになりました。同年4月には、絹産業遺産を持つ地域の民間団体が、より良い形で世界遺産を目指すため、「シルクカントリーぐんま連絡協議会」も結成され、地域の枠を超えて民間団体が手をつなぎ運動ができるようになりました。

 これまでの5年の歳月の中で、伝道活動も多彩になりました。講演やパネル解説に加え、オリジナルキャラクターによる「ヘリテイジ仮面ショー」では工女ぐんまちゃんも出動して子供たちを楽しませます。学校へ行ってクイズや上州座繰り体験を通して絹に関心を持ってもらう「学校キャラバンも好評です」。工女ぐんまちゃんの塗り絵や繭クラフトは親子で楽しめます。これからも呼ばれればどこへでも出かける伝道師協会にぜひお声がけください。

 さて、群馬県では本年度から世界遺産登録に向け推薦書の作成に取りかかりました。しっかりとした推薦書を作り上げることは当然大切ですが、世界遺産の実現には幅広い県民の支持、支援が不可欠です。地域の支えのない文化遺産では世界遺産への登録は難しい時代になっているのです。

 群馬では、今や個人、民間団体、中小から大企業までの世界遺産登録運動に協力していただけるようになりました。県民一人一人が、世界遺産にふさわしい価値と誇りを語り継ぐことにほかなりません。これからも、私たち伝道師協会は自信と確信をもって「県民みんなの力で世界遺産に!」と「富岡製糸場と絹産業遺産群」を語り続けていきます。





(上毛新聞 2009年11月6日掲載)