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石北医院小児科医師  石北 隆(渋川市渋川)  



【略歴】前橋高、東邦大医学部卒。医学博士。東邦大学医学部客員講師、日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医、日本小児科医会子どもの心相談医。


川崎病を覚えてますか


◎罹患者は健康的生活を



 川崎病をご存じでしょうか。1967年、日本人の川崎富作先生が発見した小児の難病の一つです。1歳前後の乳幼児を中心におこり、全身の血管を冒し、心臓に冠動脈瘤(りゅう)という後遺症を残すことがあります。過去40年間に多くの研究がなされてきましたがいまだに直接の原因は判明していません。この数年は年1万人以上が発症し、小児科を有する病院では肺炎や感染性胃腸炎、喘息(ぜんそく)などに次いでオーソドックスな疾患となりました。

 急性期には高熱と目の充血、唇の紅潮や手足の腫れ、発疹(ほっしん)、首のリンパ節の腫れなどをおこします。いずれも全身の血管の炎症による症状です。発見当初は自然に治る病気と思われていましたが、70年代に入ると死亡例(突然死)の報告が相次ぎました。亡くなったお子さんの多くは心臓を栄養する冠動脈に瘤を認め、冠動脈を血液の固まりが閉塞(へいそく)させたことによる心筋梗塞(こうそく)や冠動脈の破裂でした。

 このころから川崎病は心後遺症を残し、小児に突然死を起こす恐ろしい病気として社会に認知されました。当時は川崎病に罹患(りかん)したお子さんの1~2%が亡くなっていました。その後の研究により発症9日目ごろの冠動脈におきた激しい炎症が、血管壁構造を破壊し瘤を作ることがわかりました。80年代半ばからは治療法や検査法が急速に進歩し、90年代末には川崎病で亡くなる方は0・1%前後まで減少しました。今日では多くの方が後遺症を残さず治癒しています。しかし、現在も約4%の方に後遺症がみられます。研究者たちはこの数字を0にすべく奮闘しています。

 1970年の全国調査開始以来、国内ではこれまで25万人以上の患者さんが報告されています。このうち10万人近くの方がすでに成人に達し、小児科医の手を離れています。多くの方は乳幼児期の発症ですので、ご本人の記憶には残っていないでしょう。実のところ川崎病に罹患した方の血管に加齢による変化が加わった場合、どうなっていくかは今後の研究課題です。発症後何年も経過して事故など他の原因で亡くなった患者さんの冠動脈を詳しく調べると、全く正常の方もいれば、血管壁の変化が残存する方もいます。30~40年前の乳幼児の心臓の検査は現在に比べるとはるかに情報量の少ないものでした。

 もし中高年になったあなたが小さなころに川崎病と診断されていたのなら、喫煙や肥満など動脈硬化や生活習慣病のリスクを負わない健康的な生活をこころがけて下さい。特定健診の受診もお忘れなく。






(上毛新聞 2009年11月14日掲載)