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群馬大大学院工学研究科教授  宝田 恭之(桐生市菱町)  



【略歴】群馬大大学院修了。東北大の研究所などを経て群馬大工学部教授に。同大工学部長を2005年から、同大大学院工学研究科長を07年から今年3月まで務めた。


温室効果ガス削減


◎潤いのある未来社会に



 地球は約50億年前に誕生し、数億年かけて化石資源を蓄積した。人類はそれを大量消費して文化的な生活を送っている。現在、273億トン(2006年)もの二酸化炭素が放出されている。1950年は50億トンで、60年程度で5倍以上増加した。鳩山新首相は、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという日本の中期目標を表明した。新たな国際公約である。大変重要であり、また達成するにはハードルの高い公約でもある。

 わが国は京都議定書で、2008~12年に1990年比6%の削減を約束したが、現状は約8%の増加となった。国民の合意がなかったことにも原因があるが、的確な削減ビジョンが示されなかったことが問題と言える。今回の国際公約に関しても同様なことが言える。二酸化炭素放出量は1人当たりに換算すると、米国20トン、日本10トン、中国4トン、インド1トンである。この状況で、公平にエネルギーを利用し、世界全体の繁栄と平和を構築していくことは大変な作業である。

 25%削減には、新エネルギー開発も重要であるが、ライフスタイルの変革がより重要な課題といえる。以前、二酸化炭素削減生活を学生と共に送ったことがある。面白いことに、削減によって友達間のコミュニケーションが増えた。最近の学生は友達付き合いがうまくない。家族の中でも、個々の部屋にテレビ、ステレオなどがそろっているため、会話がなくなり、孤立するという問題も生じている。学生は削減のために友達と行動を共にした。これは学生にとって快適であったようである。これらの現象は学生に限らず、一般市民の間にも見られる。つまり、エネルギーの大量消費によって過度に分散化された社会が作られている。今後、コミュニケーションの取れる社会が一つのキーワードになる。

 脱温暖化は長期戦である。削減のために不自由な生活を強いられるのならば、達成は困難である。一方、インターネットで隣の人にまでメールを送り、パソコンゲームに熱中し、ビデオで時間をつぶし、インスタント食品で満足するような生活が本当に幸せな生活であろうか。本物志向が望ましい。メールよりも直接話すほうがよっぽど良い。釣りゲームで100匹釣るよりも、利根川で1匹ヤマメを釣るほうが感動は大きい。母親の手料理はどんな高級レストランも及ばない。

 物質文明や科学技術をすべて放棄するつもりはないが、必要なときだけ大切に使うべきではないか。豊かな自然に浸ってレベルの高い快適性を目指すことが脱温暖化の一つの解決策になる。群馬県は世界に先駆けて潤いのある未来社会を構築できる環境を備えていると思う。






(上毛新聞 2009年11月21日掲載)