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社員教育研修「イマージュ」取締役  久保田 桂子(前橋市笂井町)  



【略歴】渋川女高、青山学院大卒。日本航空国際線チュワーデスを経て、社員教育研修「イマージュ」を設立。病院、施設、企業研修に注力。県商工会連合会エキスパート。そば処静庵女将。


深く無償な親の愛情



◎語り伝えが大きな力に



 1200。この数字を見ると思い出すことがあります。私ごとで恐縮ですが、自身の出生時の体重です。7カ月の早産で生まれた私は、今でいう超未熟児でした。真夏の8月にもかかわらず体温は35度に満たず、とても育つ可能性がないと医師にも見放され、死産として扱われそうになったそうです。

 頭の大きさは湯のみ茶わんくらい。足は父の親指の太さくらいだったとのこと。そんな私を母と祖母は懸命に育ててくれました。小さ過ぎて湯たんぽが使えないため、ビール瓶3本にお湯を入れ、24時間休む暇なく身体を温め、口が小さ過ぎ母乳が吸えないので、脱脂綿に米の煮汁や煮干しを浸し、飲ませてくれたとのことです。祖母の祈りは壮絶で“自分の命を引き換えに、どうかこの子を助けてください”と昼夜祈ってくれたと、つい先日、母の口から詳しい出生時の話を初めて聞きました。

 時を同じくし、山梨にある祖母の墓参りに数年ぶりに行き、同行したT先生と一緒に墓石を磨きました。苔こけとカビで汚れた石をたわしとぞうきんで必死に洗うこと3時間。碑は別の物のように光を放っていました。初めての体験に心も同じように浄化され、すがすがしい思いでいっぱいになっていました。

 親が子にその子の出生時の出来事を話すことで生まれるコミュニケーションの時間。子供は話を聞くことで、あらためて親の深い思いや愛情を知る。今、自分がここにいることは、そんな親やいろいろな人のおかげと気づけるのではないかと思います。

 その気づきはその後の人生で挫折を体験したりピンチに遭遇したときに大きな力や励ましとなるのではないでしょうか。“こんなに苦労して自分を育ててくれた”。今、この年齢になりあらためて頭が下がります。親の愛は無償です。決して見返りを期待しません。しかし私も含め人間は皆愚かです。私がこうしたからあの人はこう言ってくれるに違いない。おれがこれだけやったんだからあいつはきっと感謝してくれるはずだ。みんな見返りを期待します。しかし時として期待は裏切られ、人は失望し、相手をうらむことさえあるでしょう。

 親が子を愛するように見返りを期待することなく人に接する。これはとても難しいことですが…。(1)相手と自分はまったく違う人間であることを認識する(2)会って話すことを面倒に思わない(3)伝わるまで伝えきる(4)自分と相手を信じること。これがコミュニケーションの原点だと思います。 人間関係が希薄になり、信頼関係が築きにくい現代。最後に人と人を結ぶものは人以外にないことをあらためて確信しています。






(上毛新聞 2009年11月27日掲載)