視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
シネマテークたかさき支配人  志尾 睦子(高崎市八幡町)  



【略歴】県立女子大卒。1999年から高崎映画祭ボランティアスタッフに参加。その後、同映画祭ディレクターとなる。2004年からシネマテークたかさき支配人。



地方で相次ぐ劇場復活



一緒に底上げ模索を




 昨秋、映画芸術編集部から寄稿依頼の連絡が入った。季刊で発行している雑誌「映画芸術」に2004年から08年にかけて不定期連載されていた「映画館通信」を大幅な加筆修正を加えて新たに単行本化するという。地方で映画館を運営する人たちに映画館の実態をリポートしてもらっていたものだが、今回書籍にするにあたり、新規でいくつかの劇場にも寄稿をお願いしている。ついては、映画館経営の理想、現実、魅力、困難をテーマに書いてほしいというものだった。

 書籍のタイトルは『映画館(ミニシアター)の作り方』。映画館業界で名の通った諸先輩劇場さんや、この5年の間に立ち上げた新しい映画館、復活した映画館など16館をとり上げている。正直なところ、これって誰が読むのだろうと思ってしまった。映画館が軒並みつぶれていくご時世である。確かに私たちをはじめとしてNPO法人で新たに映画館を創ったり再建したりと活動している劇場も出て来てはいるが、ビジネスモデルとして成功しているわけではない。皆一様に苦戦の内容になるのはわかっているし、だいいち書籍業界も今は本が売れない時代である。ここに費用をかけて、そんな苦しい物語を誰が読んでくれるのか。そう思う一方で、自分に振り返れば、お客さまが入らないから映画上映をしないという選択にはならないのと一緒なのだと、編集者の方との話の中で気付いた。多分今が、このことを直視する時期なのだろう。

 人口も都市整備も映画館環境もさまざまに違う映画館が、地方で生き抜くためのアプローチの仕方はそれぞれに異なる。しかし、地方にいてもさまざまな映画を見られる環境を整えたい。テレビスポットの当たらない映画でもその中に珠玉の映画体験があることを伝えていきたいという思いはとにかく全て共通である。文化や芸術の側面からも映画をとらえながら、興行として映画館を成り立たせていくというのは二足も三足もわらじを履こうとしているようなものである。無謀な挑戦だけれど、とにかく模索していきながら進むしかない。渋谷のミニシアターの閉館を惜しむ一方で、新たに地方では映画館の復活が相次ぐ。やっぱり<町の映画館>が必要であると、地方都市に住む人たちが感じているのだ。

 09年12月4日、前橋にシネマまえばしが開館した。旧前橋テアトル西友をもう一度映画館として活いかしていくのだ。町の特質を考え、たどって来た道を考え、名画座としての方向を探る。素晴らしいことである。とにかくいばらの道だろう。けれども、この1館がまた新しい未来を作るはずなのだ。全国のこうした劇場は勝手ながら全て仲間である。映画全体の底上げのため、一緒に頑張っていきたいと思う。






(上毛新聞 2010年1月14日掲載)