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電通 メディア・プランナー  一文字 守(東京都品川区)  



【略歴】高崎高卒。慶応大大学院修了。電通勤務。マーケティング、営業部門を経て、現在はメディア・プランナーとしてさまざまな広告主の広告計画立案に携わっている。


広告の作業プロセス



多くの人々の汗の結晶




 広告会社の作業プロセスはどうなっているのか。ご存じの方は案外少ないであろう。今回は、この工程を簡単にご説明しようと思う。

 まずは、広告主からオリエンテーションを受ける。ここで、広告展開する時期や予算、対象商品の特性や訴求ポイント、ターゲットなどマーケティング上の基礎情報を受け取る。この基礎情報をベースにコミュニケーション戦略全体を立案するのが、マーケティング・プランナーである。より精緻(せいち)なターゲット像を描き、メッセージのコアとなる部分を考え、戦略の大きな流れを作る。この戦略をクリエーティブ・チーム、セールス・プロモーション・チーム、メディア・チームと共有する。

 通常、クリエーティブ・チームは、統括責任者となるクリエーティブ・ディレクター(CD)、コピー(文章)を専門に手がけるコピーライター、美術大学でグラフィックデザインを専門に学んだアート・ディレクター(AD)、テレビ・コマーシャルの企画を立案するCMプランナーの4職種の人間から構成される。これらの職種の人材が課題に応じて集められる。各職種に複数人数が参加し10名規模のチームになることもあれば、CDとADの2人だけというユニットで作業を行う場合もある。このチームで、最終的に広告制作物となる表現案が練られる。

 セールス・プロモーション・チームは、懸賞キャンペーンや街頭イベントなどをクリエーティブと連携しながら組み立てる。

 メディア・チームは、ターゲットに届きやすいメディア・プランを考える。同じ予算を使う時、テレビに投下した方がいいのか、新聞に投下した方がいいのか、テレビだった場合、どの放送局がいいのかなど、ターゲットへの考察とメディアの特性を勘案しながらプランニングしていく。以上のようなチームを取りまとめ、全体を調整・統括し、進行を管理していくのが「営業」である。広告会社の営業とは、世の中一般的な営業職とは違ってプロデューサー的な役割である。

 さて、各チームのアイデアがまとまると、広告主に提案(プレゼンテーション)を行う。この提案が受け入れられると、いよいよ実施段階に移る。クリエーティブ・チームは実際に撮影・編集を行い、CMのテープや新聞の原稿などを準備する。セールス・プロモーション・チームは、懸賞キャンペーンであればその賞品の制作や買い付けを行い、イベントであれば会場選定、当日の進行台本などを用意する。メディア・チームは各媒体社と交渉し、広告枠の確保を行う。

 こうして皆さんが目にしている広告ができあがっていく。普段何げなく見ている広告も実は多くの人々の血と汗の結晶であることをご理解いただきたい。






(上毛新聞 2010年1月21日掲載)