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いせさきFM放送取締役放送局長  高橋 忠文(伊勢崎市連取町)  



【略歴】東京工科大メディア学部卒。大阪の証券会社社員、FMたまむら放送局長を経て2008年11月、いせさきFM放送の開局と同時に取締役放送局長に就任。


地域の災害時メディア



◎生活に密着した情報を



 コミュニティFM放送局というと注目されている点がある。その一つが地域防災・災害時メディアとしてである。わたしたちは防災・災害というとついつい阪神淡路大震災や新潟県中越地震のような大規模な災害を想像しがちだが、これらの災害はそうそう起こるものではない。しかし、実は災害はとても身近なものである。例えば、梅雨の大雨、落雷、台風、冬の雪など日常茶飯事で起きているこれら自然現象がさまざまな地域災害を引き起こす要因になりえるのである。

 最近では、昨年7月27日に館林市で竜巻が発生。21人が重軽傷を負ったほか、民家など約400棟が破損。この際、実際に被害を受けたのは館林市の大谷町付近から細内町付近にかけ、おおむね帯状に被害を受け、電柱が傾いて電線が切れるなどして約3000世帯が一時停電。架線故障で、東武伊勢崎線の羽生―太田間などが一時運休した。

 このように災害は、遠い所の出来事ではなく、身近に存在し、また突発的に起こりうるのである。

 では、こういった災害時になぜコミュニティFM放送局が地域防災・災害時メディアとして注目されているのか。実際に災害時に活躍した放送局の話をしよう。

 2004年10月23日に起こった新潟中越地震において活躍したコミュニティFM放送局「FMながおか」は災害当時、次のようなことを放送した。一つ目に避難に関する情報(避難勧告、開設している避難所情報)。二つ目に学校に関する情報(休校、再開等の情報)。三つ目にライフラインに関する情報(被害状況、復旧情報、予定も含む)。四つ目に生活に関する情報(ごみ収集情報、風呂・美容室情報、ガソリンスタンド情報、食料・生活用品供給情報、スーパー・コンビニ情報)。五つ目に安否情報。他にもまだまだある。

 それでは、このような時、大手テレビ放送局やFM放送局で流される情報はどんなものが多いだろうか。そこでは被害にあった土地の映像と被災者数と交通アクセス情報が流れる程度ではないだろうか。

 被災者にとって必要な情報とは生活に密着した情報なのである。

 この前、あるテレビ番組で阪神淡路大震災時に活躍した神戸新聞をドラマにしたものを見た。その際に一番印象に残っているシーンがある。1995年1月17日午前5時46分に地震が発生。大規模な災害状況にあるなか、被災者の方々に情報が届きつつあるのが夕方だった。早朝から夕方までの間、何の情報もなく不安を抱えた市民の姿が忘れられない。あの時、コミュニティFM放送局があったら、どんな安心感を与えられただろう。ライフラインが絶たれた中でも対応できるシステムがコミュニティFMにはあるのだから。







(上毛新聞 2010年2月7日掲載)