視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
ザスパ草津チーム統括マネージャー  橋本 毅夫(前橋市駒形町)  



【略歴】東京都出身。順天堂大卒。C大阪、2002W杯日本組織委、選手代理人業務などさまざまな分野からプロサッカー界にかかわる。06年からザスパ草津勤務。



選手代理人という仕事



◎選手の夢実現を後押し




 私は、ザスパ草津に来る前、選手代理人の会社に勤務してました。今回は選手代理人の仕事についてお話したいと思います。

 選手代理人になるには、資格が必要となります。資格取得のための試験は、各国サッカー協会が実施(年2回程度)し、合格者は各国サッカー協会認定選手代理人となります。試験内容は、選手の国際移籍ルールにかかわる演習問題を中心に出されます。そのルールは時折変更・修正されることもあり、国際サッカー連盟(FIFA)のホームページの確認も常に必要となります。

 現在、日本サッカー協会認定の選手代理人は27人。一見、華やかな世界のように取り扱われることもありますが、代理人資格を取得できたからといって、すぐに収入が得られるわけでもなく、クライアントである選手、また各クラブ強化担当者とのコネクションが必要となります。特に日ごろの各クラブの強化担当者との関係は極めて重要であり、その上に成り立つ職業であるといっても過言ではありません。

 選手にとって選手代理人と契約するメリットは、自身の選手としての評価を、事情を理解した第3者としての立場からアドバイスしてもらえるということです。また、代理人はクラブとの契約更新時に弁護人的な立場で、交渉時に立ち会うことができます。そして、選手本人に海外移籍の希望があれば、海外代理人とコネクションのある代理人と契約をすれば、その夢に近づくこともできます。また、所属クラブとの来季の契約が無い状況になった場合においても、自身の代わりに他クラブへ売り込みをしてくれます。ただし、代理人と契約をしたからといって、「必ず年俸が上がる!」「必ず移籍ができる!」というものではなく、あくまでも選手本人の活躍が前提となります。

 次にクラブにとっての代理人の立場ですが、これは2極化します。他クラブに所属する選手に興味がある場合、その選手の代理人に確認すれば、相手クラブに聞くとともなく、報酬・性格等の情報のほぼすべてを取ることができます。それは同時に自クラブ選手に代理人が付いた場合、その逆にもなるということです。代理人は複数クラブの、複数選手と契約をすることになるので、同じ代理人であっても、クラブにとっては、適にも味方に見なるものなのです。

 移籍金撤廃等のルール変更の影響を受け、今後クラブは、将来を見据えたチーム補強戦略がさらに必要となります。よって選手情報は必要不可欠であり、その情報源である代理人の存在は無視することのできないものなのです。









(上毛新聞 2010年2月12日掲載)