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第一高等学院高崎校長  篠原 裕(前橋市関根町)  



【略歴】渋川市出身。中央大法学部卒。第一高等学院高崎校長として、不登校生の支援や高卒サポート、高卒認定試験の指導を行う。県ニート対策会議委員も務めた。


自力進学のすすめ



◎自立の機会につなげて




 群馬労働局によると、県内の高校求人数は前年度より半減して、過去15年で2番目に低い水準らしい。それでも親世代の求人倍率と比べれば2倍くらい。親が稼ぐのも大変ですから、この就職難はほとんどのご家庭で理解されていることでしょう。ただ、就職できなければ就職先が見つかるまで面倒見てあげるという「甘え」を許してしまうと、お子さんの自立の機会を逃してしまいます。「とりあえずフリーターでも仕方ない、バイトしながら仕事を探せば」。これは親として禁句です。

 また、就職が難しいのでとりあえず進学して、もっと有利に就職したいという傾向は全国的に出てきているようです。しかし、進学についても、昨年度の高校卒業生が進学を断念した理由で一番多いのは、「学力」ではなく「学費」という調査結果もあります。

 保護者の皆さんにお願いしたいのは、あきらめないでいただきたいということです。本人、ご家族共に健康だとしたら、お金が無いから進学できないということは、私はないと思います。それは、お金がないなりにどうしたら良いか対処する方法をご存じないか、進学の機会をお子さんの自立につなげるという覚悟がないか、どちらかです。

 今春の本校卒業生には何らかの学費免除を受けた生徒が12名いますが、進学、就職してからさらに頑張る方法もあります。例えば私立大文系に下宿して通うケースで、国民政策金融公庫から入学前に100万円、入学後に日本学生支援機構(旧育英会)奨学金を借り入れる場合、国民政策金融公庫からの借入金については、大学在学中は元金据え置きにして、月々わずか2000円ほど支払うだけです。大学を卒業し就職して働いた給与の中から本人が月々3万円ほど6年間返し、20代後半から40歳くらいまで月々1万8000円ほど返済していく。専門学校であれば、大学の前例より卒業後はそれぞれ月1万円少なくでき、30歳で支払い終えることができます。また、専門学校が紹介してくれた企業で昼間は働き、夜は専門学校に通い、皆と同じ2年で卒業し、就職する制度もあります。そのような学生を企業はほしがるでしょう。本校の福祉専攻科保育士コース(2年制)にも、働きながら年間10万円ほどの学費を自分で工面している学生が大勢います。

 進学・就職の機会は、最終的に自分の意志で決定し、その決定に責任を持ってやりぬくという点で、本当の意味で自立の機会と言えます。自分に向いている仕事は何か、自分探しも大切だと思いますが、まずやってみる、動くことから始めてほしいですね。そのきっかけとして、お子さんに自らの生き方や仕事のこと、特に働きがいについてぜひ伝えてあげてください。








(上毛新聞 2010年2月15日掲載)