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社員教育研修「イマージュ」取締役  久保田 桂子(前橋市笂井町) 




【略歴】渋川女高、青山学院大卒。日本航空国際線スチュワーデスを経て、社員教育研修「イマージュ」を設立。病院、施設、企業研修に注力。県商工会連合会エキスパート。そば処静庵女将(おかみ)。



人と人とを結ぶもの



◎直接会って心を交わす




 「去る者日々に疎し」ということわざがあります。英語で「Out of sight out of mind」(視界から離れたものは心からも離れる)。大変興味深い表現だと思います。現代はさまざまなコミュニケーションツールがあります。手紙、電話、ファクス、メール、最近ではツィッターなるものも登場し人気を集めています。これらにより、直接、人と会わずに世界中どこにいても瞬時に情報交換できる、とても便利な世の中となりました。しかしそれと相反し、人の心がなぜか不安定になったように感じます。それはあまりにも多すぎる情報が原因のひとつになっているのでは。

 今、一番主流のメール。私自身も連絡の半分以上メールを使用しています。手軽に使え、絵や写真、音楽などで視聴覚にもアピールでき、楽しく便利なツールです。ただし表現方法や操作を誤ると思わぬ誤解やトラブルになることもあるので、送信前には必ず再チェックしましょう。そして相手の状況も考慮し、焦らず返事を待つ“心のゆとり”を持ちたいものです。

 電話は直に声が伝わるため、話し方や気配などで双方同時に状況がつかめます。しかし、顔が見えない分、言葉遣いや語尾や発声等に細かな配慮が必要になります。

 以前と比べ、書くことの少なくなった手紙。手書きのものや絵手紙などは送り手の心が感じられうれしいものです。相手が大切にとっておきたくなるような一筆を時にはしたためてみませんか。遊び心も入れながら…。

 直接会って話す場合、言語と非言語(言葉以外のもの)の割合は何と、言語3に対して非言語7。非言語の影響がとても強いのです。非言語とはパラランゲージ(周辺言語と呼ばれ声の高低、語調など)、目や顔の表情、身体表現、洋服やネクタイ、時間やタイミング、花などのプレゼント類、相手との距離や位置関係など。これらのすべてが自己表現につながってゆくのです。

 私たちはその時々の状況を判断し、場に合った方法でツールを選び使いこなすことが必要です。ツールに振り回されるのではなく。

 しかし、こんなに簡単に人同士が接触できるのに、本来の人間関係がだんだんと希薄になってゆく事実はいなめません。

 本当に大切な人と良い関係を築きたい時、トラブルやクレーム時の対応などは可能な限り早く時を作り、直接会い、わかり合えるまで話す。「百聞は一見にしかず」「Seeing is believing」です。


 どんなに情報化が進んでも人は人により癒やされ温められ、つながってゆくのだから。

 時には携帯を安心して置き忘れ、今この瞬間に目の前にいる人、美しい自然などに思いきり心をあずけてみませんか。







(上毛新聞 2010年3月20日掲載)