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赤城自然塾事務局長  小林 善紀(桐生市黒保根町) 




【略歴】桐生高校、同志社大商学部卒。「古久松木材」(高崎市)に30年間勤務。1998年から4年間、旧黒保根村収入役を務めた。現在は赤城自然塾事務局長。



上下流協働で松枯れ対策



◎水源の森づくり推進を




 標高500メートル付近の前橋市富士見町を中心にした赤城地域は、松枯れの進行が極端に進んでいます。

 100年ほど前、九州で確認された松枯れは現在、青森県まで北上しており、この間に国、自治体、民間で費やされた対策費は膨大な額になっています、しかし、その効果は一部を除いて顕著には現れていません。このことは松枯れの進行状況が証明しています。

 そんななか、赤城地域では「赤城クリーン・グリーン・エコネットワーク」が中心となって、「水は森がつくる」をキーワードに上下流域市民協働による水源の森づくりが始まっています。「松枯れ、花粉症、材価の低迷、獣害」の因果を共有し、協働して森づくりに当たることは問題解決につながる可能性があります。

 松枯れの原因は、マダラカミキリムシが媒介したマツノザイセンチュウによるというのが通説ですが、これ以外に「硫黄酸化物等による大気汚染と樹木の立ち枯れの関係説」や、複合要因説も現れ、これまでとられてきた対策に疑問が出てきています。

 これら諸説の中で、「化石燃料の大量消費による硫黄酸化物の排出が大きな原因の一つであると」する説は説得力があります。下流域の市民と共に問題と対策を共有し、共有財産として水源の森づくりに取り組むための動機づけにもなるのではないかと思います。

 このほかに私たちが取り組んでいる三つの事例を紹介します。これにより理解者、協力者、参加者の増大につながれば幸いです。

 (1)首都圏水源の森づくりエコツアー NPO法人シブヤ大学MOTTAINAI学科が、2007年9月、08年10月、09年10月の3回、校外コースとして実施しています。

 (2)広葉樹による森づくり 03~09年の間「桐生・新宿森と水による交流」事業として7回実施しており、今年5月30日には8回目を実施します。桐生市を含めた関係5団体による協働事業です。

 (3)室沢交流の森づくり 09年11月からサンデンフォレストで始められました。企業の社員有志、県内森林ボランティア、下流域市民による協働森づくり事業です。

 これらを実施するうえで大切なことは、森づくりには必ず専門家による指導・仕上げが欠かせないことです。赤城では赤城南麓(ろく)森林組合、桐生では桐生広域森林組合等の理解と協力を得ています。

 今後は参加した多くの方々と豊かな森を夢みて、100年、200年の森を視野に入れた森づくりのグランドデザインを提案していきます。






(上毛新聞 2010年4月2日掲載)