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書肆画廊・奈良書店経営  奈良 彰一(桐生市本町) 



【略歴】東京・神保町の古書店で修業。現在は、桐生祇園祭の屋台と鉾ほこの研究、保存に努めるほか、安吾を語る会の代表。大川美術館嘱託。桐生市観光基本計画作成委員。



上州の山車と屋台



◎「展示式」の蔵を各地に



 上州人は実に祭り好きである。そして上州は山車(だし)と屋台の宝庫でもある。江戸時代から明治、大正、昭和へ、絶えることなく建造されてきたのだ。上州の山車は約220台、屋台は約90台、現存総数は310台を超える。高崎の38台を筆頭に、前橋や渋川、藤岡、富岡、沼田、波志江、世良田、そして桐生の8台など、附け祭りには欠かせない重要なものとなった。

 小型から中型、大型まで多様な山車群は、大半が地元の蔵に保管している。元来、祭礼時に組み立てて、終了時に解体するのが常である。しかし近年では、人手不足と経費が過剰な負担となり、簡易倉庫に組み立てた状態で保管している。いつでも出せるというわけである。

 しかし、100年を超える山車から近作に至るまで材質は木材である。つまり呼吸しているのである。特に乾燥と湿気の激しい上州ではひび割れの心配がある。せめて倉庫の内壁はスギやヒノキ材を張り、水打ちなどの対策を施してほしいものである。

 今や、山車は単なる祭礼だけのものではない。特に、観光面では重要な役割が期待されてきた。人形、彫刻、四方幕、お囃子(はやし)が一体となって価値を高めてきたのである。巡行の姿、実に美しいではないか。私は、各地に展示式の山車蔵が普及してほしいと願っている。

 桐生では、「あーとほーる鉾座(ほこ)」に高さ9・2メートルの鉾と幅7・5メートルの巨大屋台が2台展示され、全国初の試みとして舞台活用で注目されている。また、隣町会の翁蔵は県内初の展示式山車蔵として建設された。当初からかかわった私は、商店街では外から見学可能なものをと考えていた。試行錯誤の末のアイデアが、開閉式のガラス戸と電動シャッターを組み合わせた蔵となった。そして既述の内壁全面にスギ材を張った。100%満足とはいかないがおおむね成功したと思っている。

 その後、高崎市あら町の面々が見学に訪れ相談を受けた。実に熱心な方たちである。より良いものにと、新アイデアが加味された。外壁は石造りとなり重厚である。ただ南向きのため、木材の内壁は全面にほしかった。しかしこれで計画は終わらなかった。四方幕は桐生の刺繍(ししゅう)技で復元し、人形の補修、はてには山車本体の化粧直しまでやってのけたのだ。これまでの道のりは地域の連帯感を生み、素晴らしい財産であることを証明したのである。

 わが町にも山車蔵をと思われたら、ぜひ2市を参考にしてほしい。立地条件は、紫外線や湿気、乾燥、室温、特に空っ風対策に配慮すれば、その土地の風土に合ったものができるはずである。上州のあちらこちらに、展示式山車蔵ができることを願って!






(上毛新聞 2010年5月5日掲載)