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社員教育研修「イマージュ」取締役  久保田 桂子(前橋市笂井町) 



【略歴】渋川女高、青山学院大卒。日本航空国際線スチュワーデスを経て、社員教育研修「イマージュ」を設立。病院、施設、企業研修に注力。県商工会連合会エキスパート。そば処静庵女将。



今という間に今ぞなし



◎言葉は不思議な訓練士





 「今、今と今という間に今ぞなし。今という間に今ぞ過ぎ行く…」。何げなく目にしたこの句にはるか昔、高校の修学旅行で訪れた京都、大徳寺大仙院住職、尾関桃林師を思い出しました。住職は私たちを案内しながらいろいろな話をしてくださいました。その中の2つの石「霊亀石(れいきせき)」と「宝船」の話が印象深く残りました。亀の形をした霊亀石は人生を過去に向かい進む人の象徴。「あの時あの人に会わなければ良かったのに…」。過去をいつまでもぐちぐち言う人の姿。宝船は未来に向かい前進する人の象徴。「生きがいのある人生は過去や未来を見ないところにある。今、ここで頑張らずにいつ頑張る」。その言葉は17歳だった私の心にその後も深く残ることになります。

 話は飛躍しますが、以前勤務していた航空会社ではお客さまに日本情緒を味わっていただくために着物によるサービスがありました。機内トイレで10分で着る規制の中、大奮闘して着替えたもので、その最中「窓の外にオーロラがごらんになれます」のアナウンスが聞こえたのです。儚(はかな)く消えゆく美しいオーロラを見たい一心で帯をしないままで客室に飛び出した新人の私は“今”を大切にしたということになるのでしょうか(笑)。懐かしい思い出です。

 「今この時を大切にする」。わかっていても言うは易し行うは難しです。そんな時、言葉の持つ不思議な力を借りるのも一つの方法です。「朝一番に口に出した言葉は一日を左右するほどの影響力がある」とは私の師事する医学博士佐藤富雄先生の言葉です。

 これからの梅雨の季節は誰しも気分が落ち込み気味。そんな朝、窓を開け新鮮な空気を入れ「今日はきっといい日になる」。体調のすぐれないつらい朝、少しやせがまんして言ってみる。「今日は何か調子よさそう」。仕事や人間関係トラブル等で悩みが深刻な時、「自分に解決できないことは起こらない」「起きることは全て自分にプラスだ」等。本当に苦しい時は、実行するのはつらく大変難しいことですが、あえて口に出して言うことがポイントです。

 また、自分へのほめ言葉、「よく頑張ってるね、偉かったよ」等も。きっと心がほっこりとすることでしょう。出した言葉に脳が反応し“快”状態となり解決策を探し出してくれるのです。

 私の研修でもこのトレーニング後は皆さん表情がスッキリととても明るくなられます。相乗作用で講師の私たちもうれしさで疲れも飛びパワーが蘇(よみがえ)ります。

 与えられている人生が明日もわからない儚く短いものならば、言葉を選び使ってゆく。その日一日を大切に“快”と“喜び”をひとつでも見つけながら過ごしたいものです。…というわけで、今日も朝からこれらの言葉をブツブツと言いながら私の一日が始まります。








(上毛新聞 2010年5月18日掲載)