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県鳥獣被害対策支援センター所長  久保寺 健夫(高崎市井出町) 



【略歴】1970年に県庁に入庁、自然環境課、蚕糸園芸課などで勤務。2010年4月から現職。人や農作物に害をもたらす鳥獣の対策を担当している。




ハクビシンとアライグマ



◎被害に効果ある電気柵




 ハクビシンにより袋がやぶかれ、ほぼ食べ尽くされたブドウ棚を見てがくぜんとしたのは8年前、沼田市内のブドウ園でのことだった。その後、4年前には富岡市内でもイチゴ、イチジクの深刻な被害状況を聞かされた。

 2006年11月、被害農家を対象に、埼玉県庁でハクビシン、アライグマの被害対策に取り組んでいるFさんを講師とする研修会を富岡市で開いたが、県内での被害の拡大を反映してか、各地から100人を超える参加者があった。

 ハクビシンは、東南アジアに生息し、国内には江戸時代以降、愛玩目的などで入ってきたとされている。一方、アライグマは北米大陸原産で、1980年代、これを主人公にしたテレビアニメが大ブームになり、ペットとして数多く輸入されたが、成獣は性格が荒いことから、飼い主の手に負えずあちこちに放獣されたようである。

 2000年以降、県内で被害が問題となってきたが、ハクビシン、アライグマは、ともに神社や寺・廃屋・人家の屋根裏をねぐらとして活用、これにより天敵から身を守ることで、都市部でも生息頭数を急激に増やしてきたことが大きな要因と考えられる。

 食性はともに雑食性だが、果実など熟したものは好んで食べる。その食痕からは、ハクビシンはイチゴのヘタの部分を残すこと、ブドウの皮は吐き出し棚下に残していること、アライグマは、スイカに丸い穴を開け、器用に中身だけをくりぬき食べた痕から確認ができる。またトウモロコシでは、ハクビシンは茎を斜めにして、アライグマは全部倒して食べることが特徴として表れる。

 夏を控え、家庭菜園で汗を流す皆さんも多いと思う。その畑で、収穫間近にトウモロコシ、スイカなどの作物に被害を受けてしまったら、がっかりせずに、まずその状況を確認していただきたい。

 カラスやヒヨドリなど鳥の被害ではなく、ハクビシン・アライグマによるものと確認できたら、電気柵を利用した被害を防ぐ方法が、安価で比較的簡単に設置が可能であり効果が期待できるが、利用する資材は、JAやホームセンターなどで購入できる。設置の基本は1段目をできるだけ低い位置(地面から10センチメートル以下)に張ることが重要であり、そしてその上にもう1段張れば完成である。最近は防草シートが開発されており、これを利用し、その上に電気柵を設置すれば、はびこる雑草対策の省力化を図ることができる。

 被害を軽減させるためには、捕獲により生息数を減少させることも必要であるが、被害にあった時の有害鳥獣としての捕獲は、各市役所、町村役場で扱っているので、担当窓口に相談していただきたい。








(上毛新聞 2010年6月13日掲載)