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数学・科学研究家  鈴木 数成(前橋市総社町) 



【略歴】群馬大大学院修了。群馬大、明和短大などで非常勤講師を務め、科学教室や野外活動を通しての人間育成にも力を入れる。ボーイスカウト前橋第3団所属。


ささやかな願い



◎子どもとともに成長を




 「スカウトたちは活動が楽しくなければ参加をしません。行き当たりばったりでは、行き先の分からない船のように、ただ時間の海を漂流しているだけなので、そんなところに子どもを託す親もいないでしょう」

 これは、今春に3泊4日で行われた、関東各地からやってきた参加者が集う研修での講師の言葉である。

 私は幼児から小学2年生までの子どもたちが集まるビーバー隊の副長をしている。私たちは子どものことをスカウトと呼び、そのスカウトたちにプログラムを提供するのが役割である。四季を感じること、体を動かすこと、発見すること、創造すること、そして他者を敬い、助け合うことなど、その活動は幅広い。

 また、年齢に応じてその活動は身近な奉仕・野外活動だけでなく、日本中、世界中のスカウトが集まる大会や国際協力活動に参加することもできる。スカウトの活動には世界共通の目的があり、その教育システムのなかで心身を鍛え、人間力を培うチャンスが準備されているのだ。

 そのために普段からわれわれ指導者は仲間同士で勉強会をしたり、研修会に参加したりして、活動の目的・教育システム・安全管理・遊びや遊ばせ方を学んだり、再確認をしたりする。そこで学んだことと、それぞれの特技や経験を生かすことにより、個性のある面白い活動が生まれてくるのだ。

 しかしながら、われわれはボーイスカウトの指導者を職としているわけではない。自分の時間を割いてまで、指導者として時間の海を漂流しないよう一生懸命にスカウト活動の舵(かじ)を取ろうとする。そのエネルギーはどこから湧(わ)いてくるのか。

 まず頭に浮かぶのは、活動が充実しているときのスカウトの目の輝きや笑顔、目的を達成して満足そうな顔をしているスカウトたちの姿である。そしてふと気づけばいつの間にか次の企画を練っている自分がいる。

 ボーイスカウト活動は青少年育成でありながら、実はそこに参加する大人も、子どもも共に人として育成されていると感じている。大人がスカウト活動を企画し、子どもを育てているだけではなく、子どもの成長を支えることを通して大人も大人として育っている。

 「大人が子どもの育つ環境を考え、整えると、子どもは力をつけていく。子どもは伸び、それを感じて大人も伸びていく」

 私はこの思考と営みこそが豊かな社会創(づく)りの本質だと思う。

 そのような環境で広い宇宙へ羽ばたく心豊かな人を育てること、そして私自身が今以上に成長していけること。これが活動を続ける私のささやかな願いである。









(上毛新聞 2010年6月15日掲載)