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石北医院小児科医師  石北 隆(渋川市渋川) 



【略歴】前橋高、東邦大医学部卒。医学博士。東邦大学医学部客員講師、日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医、日本小児科医会子どもの心相談医。


子どもの夜型化



◎良質な眠りの環境を




 日本の子どもたちは世界で最も夜更かしで睡眠時間が短い、と言われています。近年、睡眠に関する研究でさまざまなことが知られるようになりました。

 人間は昼間、十分に体を動かすことで夜の眠気が自然に訪れます。この時、脳の深部からは眠気を催す「メラトニン」というホルモンが分泌されます。人間の生活リズムをつかさどる体内時計は脳に存在し、その1日は地球の自転周期より少し長い約25時間です。体内時計と地球時間とのズレは毎日、朝の光を浴びることで無意識のうちに調整しています。このズレを調整しないと、「時差ぼけ」のように脳や体にさまざまな変化が生じます。朝の光に加え、歩く、かむ、呼吸するなどリズミカルな筋肉活動が脳を安定化させる神経伝達物質「セロトニン」の働きを高めます。セロトニンの働きが弱いと、攻撃性の高まりや抑うつ気分などの変化が現れます。またメラトニンは強い光を浴びると分泌が抑制され、不足すると体内時計と地球時間とのズレを増大させます。

 睡眠不足は思考力を低下させるだけでなく、「キレやすい」など情緒への影響、肥満や生活習慣病、老化の促進にかかわることが明らかになっています。加えて睡眠不足の子どもほど朝食を食べていないことも指摘されています。国も2006年から「早寝早起き朝ごはん」運動を推進して睡眠環境の改善を呼びかけています。

 社会の変化に伴い、子どもたちの生活も急速に夜型化が進んでいます。遅くまでの塾や習いごとなど事情もあるでしょう。便利なコンビニエンスストアや飲食店などの夜間営業も皮肉なことに夜型化を助長しています。テレビやゲーム、インターネットなど過剰なメディアに接することで、脳や体の休息時間が奪われます。ゲームに熱中している間、思考をつかさどる脳の前頭前野の働きが鈍くなることはよく知られています。夜更かしをして、明るい光の下で、刺激的なゲームに熱中し、朝寝坊をして朝食を抜く。昼間は眠気と空腹でボーッとしている。これでは脳や体の疲労は回復しません。

 睡眠の乱れを是正するには睡眠不足を解消し、体内時計を調整する必要があります。ズレてしまった体内時計の調整には時間がかかります。日ごろから朝の光を浴び、昼はたっぷりと体を動かし、規則正しく食事を摂り、夜は明かりを落としてぐっすり眠ることです。

 これから夏を迎え、子どもたちも夜更かしをする機会が増えます。睡眠環境の改善には周囲の大人の助言や協力が大切です。幼児期の昼寝は生理的なものですが、小学生の授業中の居眠りは要注意、中学生以上では睡眠習慣や生活のチェックが必要です。






(上毛新聞 2010年6月26日掲載)