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第一高等学院北関東・東北・北海道エリア長  篠原 裕(前橋市関根町) 



【略歴】渋川市出身。第一高等学院高崎校長を経て、今春から現職不登校生の支援や高卒サポート、高卒認定試験の指導を行う。県ニート対策会議委員も務めた。



親子で過ごす夏休み



◎一緒に学び充実させて




 この時期になると、夏休み中のお子さんへの接し方について相談が多くなります。「うちの子はやる気がないんです」「休み明け学校に通えるか心配」というものですが、早起きできず生活リズムが崩れることのないように、学校がある時と同じく強引にでも早起きをさせたほうがいいでしょう。夏休みの最初が肝心です。

 何でもかんでも親が指示するのは指示されないと動けない子を生んでしまいますが、普段はお子さんの話をしっかり聴き、お子さんが安心感を抱けるように努めていれば、しかるときはおもいっきりやっていいのではないでしょうか。

 「どうしてやる気がないの?」と言ったところでやる気はでるものではありません。その子の考え方から生活に至るまでやる気のでるような習慣がないことが最大の要因です。相談中に「この子はどうしようもない」と始める方がいます。でも親の良いところも悪いところも案外受け継いでいるものです。親の考え方など親の習慣を変える意識が大切でしょう。

 私どもの学校でも生徒と信頼関係を築くためには、コミュニケーションが取れていることが前提です。それがないままに「あれはダメ、これはダメ」と言ったところで生徒が聞くはずもありません。親子の関係でも同じことが言えると思います。親子関係がうまくいっていない場合は、会話が少ないか、口数は多くても親子ともに誰かの悪口や人のせいにした発言が多い傾向にあります。

 本校には、将来なりたい職業とそれを実現するためのアクションプランを書き込む進路課題があります。最初は何も書けない生徒や「がんばります」と具体的な行動計画が決められない生徒もいますが、生徒とのコミュニケーションツールとしても大切なものです。進学希望の高校2・3年生に課す夏休みの宿題は、大学のオープンキャンパスや専門学校の体験学習に参加してレポートを提出することです。

 高校生とその保護者、教員を対象にした進学フェアに参加した時のこと。調理体験コーナーで、魚の切り身に苦戦していた高校生たちが包丁さばきに集中している姿は、親の「やる気がない」発言とは別物でした。男女半々でしたが、お父さんはやはり少なかったですね。父親が参加できる労働環境でないのかもしれませんが、忙しければ、お子さんと一緒に勉強するのもいいと思います。親がどういう生き方をしているのか見せることも良いのでは。

 親子ともに夏休みは日ごろできないことを計画して、自分で生活を充実させる絶好の機会です。お子さんが、家族と接する時間も長くなります。家族の深い愛情や励ましにより、新たな学びの夏休みになることを願います。







(上毛新聞 2010年6月28日掲載)