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電通 メディア・プランナー  一文字 守(東京都品川区) 



【略歴】高崎高卒。慶応大大学院修了。電通勤務。マーケティング、営業部門を経て、現在はメディア・プランナーとしてさまざまな広告主の広告計画立案に携わっている。


W杯と広告業界



◎拡大続けるビジネス



 健闘むなしくも日本代表は敗退してしまったが、遠い南アフリカの地では日々熱戦が繰り広げられている。FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のことである。W杯と広告業界とは今や切っても切れない絆(きずな)で結びつけられている。本稿ではその結びつきについて広告会社の視点から簡単に説明したいと思う。

 広告会社のビジネスとして第一に挙げられるのがスポンサー探しである。一口にスポンサーと言ってもその種類はいくつかに分かれている。

 最も大きなものが「FIFAパートナー」であり、これはビジネス・カテゴリーごとに6社が契約している。現在開催中のA代表のW杯だけではなく、年代別W杯や女子W杯などFIFAが主催する国際大会について、ワールドワイドで広告展開に活用できる。

 次が大会スポンサーである。これは今回のW杯南ア大会に限りワールドワイドで展開されるもので、8社の契約がある。さらには、開催国である南ア国内限定で広告展開できる国内スポンサーがある。広告会社はFIFAとこれらの企業を結びつけ、コミッションを得ている。

 これらのスポンサー名は会場内の電子看板に露出されるため、テレビ中継を通じて我々も目にすることができる。その面積や回数が多いほど、より上位のスポンサーであるので皆さんも中継中にチェックしてみたらいかがだろう。

 広告会社の仕事としてはスポンサー探しだけでは終わらない。各スポンサーは世界で数社しかない権利を有しているのだから、W杯を使ったキャンペーンを行う。これらの広告素材の制作、各種キャンペーンなどを各国の広告会社が仕立てるのだ。こうして広告会社のビジネスチャンスは広がっていく。なにしろ今大会の予選には199の国と地域が参加し、全世界の延べテレビ視聴者数は300億人と言われるほどのビッグイベントなのだから。

 また、電通はFIFAから日本国内における放映権を一括で買い上げ、これを各媒体社に販売するというビジネスも行っている。放映権自体もテレビ地上波、衛星放送、ラジオ、インターネットなど多岐に渡る。もちろん番組内の広告枠(NHKを除く)の広告主に対するセールスも行っている。これは対象番組がW杯になっただけで通常の広告ビジネスと同様の作業である。

 このように、W杯と広告会社は共存関係にある。今後もインターネット領域のさらなる拡大や3D放送の一般化など、メディアや映像デバイスの進化がW杯というコンテンツの価値をより高めていくだろう。それに伴って広告会社のビジネスも拡大し続けるはずである。







(上毛新聞 2010年7月2日掲載)