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NPO法人自然塾寺子屋理事長  矢島 亮一(高崎市中尾町) 



【略歴】宇都宮大大学院修士課程修了。青年海外協力隊員としてパナマで2年間活動し、帰国後に自然塾寺子屋を立ち上げた。2003年にNPO法人認証を受けて現職。


日本の地域開発



◎住民主体で価値再発見




 開発とは「(天然資源を)役立たせること」「(新製品などを)実用化すること」「知識を開き導くこと」などをいうが、地域開発は、施設の整備などを意味することが多い。

 日本における地域開発は、戦前、国家経済のための地域資源活用を目的に始まったが、戦後の高度経済成長期には、地域格差をなくすための地域の産業・交通基盤整備が盛んに行われ、さらに近年では、各地で地域住民主体の地域活動が脚光を浴びている。

 従来、開発は生産の増大を意味し、開発における資金・技術の重要性とトップダウンの実行方式をその特徴としてきた。しかし、現在では、開発とは持続可能なプロセスまでを含む価値の再発見であり、地域に住む人々の視点・能力を前提とした人間と環境の相互関係の継続性であるとする方向に転換しつつある。

 日本は、グローバル化および価値観の多様化の時代を迎え、経済・社会すべてにわたって転換期にあると考えられる。地域問題への対応は、従来行政が主導して実施してきたが、1970年代の公害反対運動や80年代の村おこしなど、自らの問題を住民自らが参加して改善する動きが拡大してきている。この動きは、身近で、国際協力や環境保全の取り組みに端を発したが、近年はさらに発展して、高齢化対策・介護・福祉、IT化(情報通信技術)、地方行政への参加や監視等、市民の関与といった動きに発展しつつある。

 また、その担い手は有志の集まりからNPO、NGOなどへと変化し、組織化された担い手は、行政にとって「協力する団体」から「協働するパートナー」となりつつある。これらの地域活動は、「地域おこし」「地域づくり」「まちづくり」などの言葉で呼ばれている。また日本各地では、これに加えてさまざまな活動が地域住民自らの手によって実施されてきている。たとえば、地域経済の活性化や地域振興のための地方自治体独自の施策や行政のノウハウ、地域の伝統産業や技術・経験・伝統などに根ざしたさまざまな活動である。「地域開発」とは、地域をより豊かで、住みやすく、誇りをもてるようにするための行政・市民(住民)・地元産業の諸活動を意味する。

 われわれの活動の目的は、日本の地域が持つ貴重な技術、経験を国際協力に活いかしていくための方策を検討するとともに、日本で地域開発に携わる人たちが、国際協力・交流を通じて得られるものは何か、国際協力に展開しやすい環境とは何かを明確にし実施することである。そして甘楽富岡地域においてNPO活動の中心を地域開発と位置づけ、国際協力事業と連携した新しい取り組みを展開する。









(上毛新聞 2010年7月6日掲載)