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独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 
群馬障害者職業センター主任障害者職業カウンセラー  
                            中村 志美
(前橋市天川大島町) 



【略歴】日本女子大卒。1994年に就職し、北海道と千葉のセンターや国立職業リハビリテーションセンターなどで障害者の就労支援に従事。2009年4月から現職。

障害者雇用のために



◎職務を作り出す大切さ




 障害者雇用を考える企業の方から「求人を出しているが、面接希望者が現れない。どんな仕事を任せたらよいか」とご相談を受けることがある。求人票の仕事内容が一般求人のそれと同じ場合が多いことから、私たち障害者職業カウンセラーは、まずは仕事の分担やその仕事を行うために必要なことは何かといった条件をもう一度整理することを提案している。事業所内の仕事を一つ一つ丁寧に確認すると、行程の中で切り分けられる仕事、行程から切り出すことで全体的に効率が上がる仕事が見つかる場合があるからだ。

 最近は個人情報保護やセキュリティー対策が厳しくなってきているので、実際の職場を見させていただく機会は少なくなっているが、製造業の現場を拝見すると、障害のある方が対応できそうな仕事を見つけられることは多い。「できそうな仕事はどれか」「どう工夫するとできるようになるか」と興味を持って見たり、現場の方の説明をうかがっていると、自然と見えてくることがある。例えば、メーカーの工場で、部品の番号や色別シールを利用して種類を判別しやすくする、台車に段ボールの積み方を表示した図を貼(は)り付ける、などは私たちが知的障害の方の雇用を進める際によく提案する工夫のひとつだ。

 どんな仕事を任せたらよいか、を考える上のポイントをもうひとつ確認しておきたい。それは、「障害のある社員に職場の戦力として活躍していただく」という視点だ。前回この欄(5月4日付)で、感銘を受けた出来事としてある企業の取り組みを紹介したが、働くことを通じてお互いが良い関係を続けていくためには重要なポイントだと思っている。そうした企業の職務設計の素晴らしさに勇気づけられることも多い。特に最近は、復職者の受け入れにあたって、新たに職務を作り出していただく事例を数多く体験している。

 事例としては、出張制限のあるうつ病復職者の方の仕事として、外回りの職務は同僚の方々が担当し、外回り後に発生するデータのパソコン入力作業を本人が担当するよう職務を調整いただいたケースだ。

 記憶の障害で仕事の手順をスムーズに覚えることが難しくなった高次脳機能障害の方の仕事として、事業所内における事務用品集中購買システムの一部を切り出し、実施マニュアルまで準備して受け入れた企業もあった。

 障害のある方が戦力となるには、本人の特性や力量に合った仕事を探し出すこと、企業の方には仕事を作り出していただくことが大切だ。私たち障害者職業カウンセラーが障害の特性を分かりやすくお伝えすることで、前述のような企業が一つでも多く増えていくことに大きな期待をもっていたい。









(上毛新聞 2010年7月14日掲載)