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NPO法人環境システム研究会理事長  横島 庄治(高崎市吉井町)



【略歴】長野県上田市出身。元NHK解説主幹。元高崎経済大教授。群馬県総合計画策定懇談会委員。高崎市都市計画審議会会長。専門はまちづくり、交通政策、観光開発。


観光キャンペーン



◎そよ風のおもてなし




 群馬デスティネーションキャンペーン、略して「デスキャン」が始まる。

 JR各社の旅行企画として全国に展開しているこのキャンペーンは、JR側がディスティネーション(目的地)を選定し、その地元自治体と提携して一定期間集中的に観光キャンペーンを張ろうというものだ。その群馬版が来年7月から9月までの3カ月間繰り広げられることになり、今年はその前年に当たることから事前の行事も展開されている。

 受けて立つ群馬県側も観光局が中心になって体制を整え、「心にぐぐっとぐんま わくわく体験新発見」というテーマで動き出しているが、県民の反応は今のところそれ程ではないようだ。1年先の話だから勝負はこれからなのだろうが、気がかりもある。

 そのひとつが名称だ。観光客を掘り起こして集めて運ぶ送り出す側に立った訪問先キャンペーンというのがデスキャンの由来だから、JRサイドでいえば「行こう群馬へ」ということでよく解る。

 一方、受け入れる側の群馬サイドに立つと「ようこそ群馬へ」と立場が変わるから、デスキャンではなく「ウェルキャン」、つまりぐんまウェルカムキャンペーンとなるのが筋のはずだ。

 だからといって、集客作戦はJRにお任せというのではなく、共同で群馬の魅力の再発見や観光商品の開発に知恵を絞ることはもちろん必要だが、それよりも何よりも、観光客を気持ちよく迎え入れ、心からおもてなしをする心の準備を、県民全体の合意としてどう整えるかが、前提条件として欠かせないと思う。

 しかし私も含め、他所(よそ)から移り住んできた新県民や来訪者にとって、群馬は決してとっつきのいい所ではない。言わせてもらえばむしろ反対にとっつきの悪い所といった方がいいかも知れない。

 ところが勤めてみて、暮らしてみて分かることは、群馬の人々は実は照れ屋で、愛想こそ良くないものの、心根は優しく、外からの人を受け入れるゆとりが十分あることだ。

 もしそうだとすると、こうした県人気質は観光立県を前面に打ち出して新時代を拓ひらこうとする群馬にとっては不都合なことになってくる。

 そこで提案めいた話で恐縮だが、「かかあ天下とからっ風」をそろそろ引っ込めてみる手はないだろうか。

 その真意は悪くないし、歴史的意味合いも解るが、時代に合わせて衣替えするなら「やさしいもてなしと緑のそよ風」であり、観光キャンペーン向けにコピー化すれば「そよ風のもてなし・ぐんま」となる。

 訪れる人も受け入れる県民も心がほぐれそうだ。






(上毛新聞 2010年7月22日掲載)